ウィーン国立歌劇場 日本公演 開幕直前情報! ザルツブルク音楽祭で聴いた、2人の注目歌手

ヴァカンス・シーズンの7月〜8月は、欧米のオペラハウスはシーズン・オフとなりますが、かわって各地で音楽祭が開催されます。世界最大の音楽祭の一つとして知られるのがザルツブルク音楽祭。指揮者、ソリスト、そしてオーケストラも世界のトップが顔を揃えることで、毎年注目と話題を集めます。毎年、この音楽祭を訪れる音楽評論家の石戸谷結子さんから、今年の注目歌手として、ウィーン国立歌劇場日本公演に出演する2人についての情報をいただきました。

photo:Michael Poehn

 やっと言えるようになった、コニエチュニーという名前。じつはいま、世界の主要歌劇場や有名音楽祭で大活躍している、旬のバス・バリトンだ。日本では、ワーグナー歌手として有名で、アルベリヒ役を歌っている。しかしこの人、レパートリーが大変に広いのだ。初めてコニエチュニーを聴いたのは、2012年のザルツブルク音楽祭で、アルビス・へルマニス演出のツィマーマン『兵士たち』で、主役マリーの婚約者シュトルツィウスを歌ったのを聴いた、朗々とした美声で、強い存在感があった。2014年には『ドン・ジョヴァンニ』で騎士長を歌ったのも聴いた。重量級の美声で重々しい石像の騎士長を演じた。

photo:Salzburger Festspiele / Forster

巨大な象に乗って登場した
ジュピター役のコニエチュニー
(ザルツブルク音楽祭『ダナエの愛』より)

 

 そして今年の8月はザルツブルク音楽祭最大の呼び物だったリヒャルト・シュトラウスの『ダナエの愛』に出演。美しいダナエを手に入れようと画策する神々の長、ジュピターを歌った。同じくヘルマニスの演出で、アラビアン・ナイト風の派手な演出が話題になった。コニエチュニーは大きなターバンを頭に巻き、なんと巨大な象に乗って登場した。大勢の美女たちの愛人がいながら、ダナエにも恋する浮気もののジュピター。よく響く朗々とした声が特徴で、舞台でひときわ存在感がある。さらに演技が非常に巧いのに驚いたが、じつは彼はポーランドの出身で、アンジェイ・ワイダ監督から直接に演技指導を受け、俳優としてテレビや映画で活躍していたという。演技が巧いのは当然かもしれない。そんなコニエチュニーが、いま最も乗っている役がヴォータンだという。深い美声と十分な声量、そしてちょっと色っぽい歌い方。持前の歌唱力と演技力を生かし、どんなヴォータン像を見せてくれるのか、期待が膨らむところだ。

photo:Michael Poehn

 今年のザルツブルク音楽祭で、もう一人、注目すべき歌手にめぐりあった。マルガリータ・グリシュコヴァ。1987年サンクト・ペテルブルグ生まれの、まだ28歳という若手メゾ・ソプラノだ。スヴェン=エリック・ベヒトルフの演出による『フィガロの結婚』で、ケルビーノを演じていたのだ。若々しいエネルギーが満ち溢れるような溌剌とした演技とパワフルな声で、いたずらっ子のケルビーノを生き生きと歌っていた。1幕の「自分で自分がわからない」も良かったけれど、2幕の「恋とはどんなものかしら」を、ゆっくり目のテンポで深い表現力で歌い、聴衆から大きな拍手を受けた。

photo: Salzburger Festspiele / Ruth Walz

左からケルビーノ役のグリシュコヴァ、
伯爵夫人(アネット・フリッチュ)、
スザンナ(アンナ・プロハスカ)
(ザルツブルク音楽祭『フィガロの結婚』より)

 

じつは彼女、昨年もザルツブルクでケルビーノを歌っており、これが同音楽祭デビューだった。この時の歌唱と比べてみると、この1年で歌唱力が一段と進歩したのを実感した。いまグリシュコヴァは、ウィーン国立歌劇場の専属ソリストとして、多くの舞台に立っている。ケルビーノをはじめ、『セビリャの理髪師』のロジーナや、『シンデレラ』のアンジェリーナ、『ばらの騎士』のオクタヴィアンなど。まさにいま、上り坂のウィーン国立歌劇場イチオシのメゾだ。日本でもお得意のケルビーノを歌うが、その成長ぶりをこの耳でしっかり確かめたい。

 ウィーン国立歌劇場日本公演を記念した講座が開催されます。この講座の主催は、「MMM(メゾン・デ・ミュゼ・デュ・モンド)」。MMMは、2003年にRMN(フランス国立美術館連合)とDNP(大日本印刷)との共同プロジェクトとして開設されたMMF(メゾン・デ・ミュゼ・ド・フランス)を前身として、MMFの開設10周年を機に、2013年5月に「MMM(メゾン・デ・ミュゼ・デュ・モンド)」と改称・リニューアル・オープンした、美術を中心に、世界のアートやデザインと暮らしとの接点を拡げることをコンセプトとした施設です。
 本講座では、音楽評論家の堀内修氏を講師に迎え、オペラの歴史やウィーン国立歌劇場の歴史および建築について、もちろんオペラの魅力についても紹介します。

 

■日時:2016年10月21日(金)18:30〜20:00
■会場:東京都中央区銀座7−7−2 DNP銀座ビル3階
■定員:50名(先着順。定員に達し次第締切)
■参加費:1,000円(消費税込)/1名
■お申し込み・お問合せ:Tel. 03-3574-2380 MMMまで
■HP:http://www.mmm-ginza.org/event/event.html#ev02

 ウィーン国立歌劇場日本公演にちなみ、クラシカ・ジャパンでは10月から11月にかけてリッカルド・ムーティ番組を再放送。10月にはまず、マエストロの人間と音楽に迫る番組が並びます。

【10月の番組は下記の通り】

●クラシカ・音楽人「リッカルド・ムーティ~わが家で語る人生と音楽」(前後編)
 初回放送:10月4日(火)21:00~22:00 [再放送あり]
●ドキュメンタリー「ムーティ・コンダクツ・ヴェルディ」
 初回放送:10月6日(木)23:20~25:05 [再放送あり]
●ムーティ&ローマ歌劇場『ナブッコ』
 初回放送:10月15日(土)21:00~23:30 [再放送あり]
●熱弁!ムーティが語る『ナブッコ』
 初回放送:10月15日(土)23:30~25:15 [再放送あり]
●ムーティ&ローマ歌劇場『シモン・ボッカネグラ』
 初回放送:10月4日(火)22:00~24:45 [再放送あり]
●熱弁!ムーティが語る『シモン・ボッカネグラ』
 初回放送:10月19日(水)21:35~22:55 [再放送あり]
●ムーティの公開リハーサル『幻想交響曲』/ムーティ&ケルビーニ管『幻想交響曲』
 初回放送:10月30日(日)21:00~24:00 [再放送あり]
*放送日時はクラシカ・ジャパンHPなどをご覧ください。

 ウィーン国立歌劇場日本公演開催期間の合間を縫って、ウィーン国立歌劇場管弦楽団メンバーによる室内楽演奏会が開催されます。
 出演は、ホルガー・グロー(ヴァイオリン)、ミラン・セテナ(ヴァイオリン)、ロベルト・バウアーシュタッター(ヴィオラ)、タマシュ・ヴァルガ(チェロ)によるカリスト・クァルテットに加え、フルートのカリン・ボネッリによる共演。  オペラのような大がかりなスケールとは異なり、室内楽には演奏者と聴衆の間に生まれる親密さが大きな魅力といえるでしょう。
 この演奏会は、日本モーツァルト協会第583回例会として開催されるものですが、会員以外の方もチケットは購入可能です。  
 演奏会の詳細は下記の通り。

     

日本モーツァルト協会第583回例会
~ウィーン国立歌劇場の室内楽~

2016年11月8日(火)開演18:45 東京文化会館小ホール

予定される曲目 モーツァルト作曲: フルート四重奏曲 ニ長調 K285
    弦楽四重奏曲 ニ長調 K499「ホフマイスター」
    フルート四重奏曲 ハ長調 K285b
    弦楽四重奏曲 変ロ長調 K589「プロイセン王 第2番」

[主催:日本モーツァルト協会/協力:NBS 日本舞台芸術振興会]

■チケット:一般5,000円/学生2,000円(発売中)
■チケット取り扱い:
東京文化会館チケットサービス 03-5685-0650
日本モーツァルト協会 03-5467-0626 ※学生券は日本モーツァルト協会のみ取り扱い
日本モーツァルト協会HP http://www.mozart.or.jp/concert/694/

2016年日本公演 ウィーン国立歌劇場
『ナクソス島のアリアドネ』

【公演日】

2016年
10月25日(火) 7:00p.m.
10月28日(金) 3:00p.m.
10月30日(日) 3:00p.m.

会場:東京文化会館

作曲:R.シュトラウス
演出:スヴェン=エリック・ベヒトルフ
指揮:マレク・ヤノフスキ

【入場料[税込]】

S=¥63,000 A=¥58,000 B=¥53,000 C=¥48,000 D=¥32,000

2016年日本公演 ウィーン国立歌劇場
『ワルキューレ』

【公演日】

2016年
11月 6日(日) 3:00p.m.
11月 9日(水) 3:00p.m.
11月12日(土) 3:00p.m.

会場:東京文化会館

作曲:R.ワーグナー
演出:スヴェン=エリック・ベヒトルフ
指揮:アダム・フィッシャー

【入場料[税込]】

S=¥67,000 A=¥61,000 B=¥54,000 C=¥49,000 D=¥33,000

2016年日本公演 ウィーン国立歌劇場
『フィガロの結婚』

【公演日】

2016年
11月10日(木) 5:00p.m.
11月13日(日) 3:00p.m.
11月15日(火) 3:00p.m.

会場:神奈川県民ホール

作曲:W.A.モーツァルト
演出:ジャン=ピエール・ポネル
指揮:リッカルド・ムーティ

【入場料[税込]】

S=¥65,000 A=¥60,000 B=¥54,000 C=¥49,000 D=¥33,000