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2021/03/17(水)Vol.418

コロナ禍の明るい兆し
デジタル併用とともに
2021/03/17(水)
2021年03月17日号
世界の劇場を知ろう
特集

コロナ禍の明るい兆し
デジタル併用とともに

新型コロナウイルスによる混乱や不安が世界中に広がってすでに1年余り。欧米の歌劇場はいまもなおほとんどが閉鎖状態を続けています。そうしたなか、3月中旬、英国ロイヤル・オペラの再開決定や、リッカルド・ムーティとケルビーニ管のイタリアツアー開始のニュースが届きました。いずれもストリーミング企画を併用しているところが、コロナ禍ならではといったところでしょうか。明るい兆しと思いたいですね。

英国ロイヤル・オペラ5月17日に再開!

3月10日、英国ロイヤル・オペラは公式に5月17日から劇場を再開すると発表しました。
英国ロイヤル・バレエ団と同オペラは、この再開で、劇場での公演、オンライン・ストリーム、世界初の超現実(ハイパー・リアリティ)オペラの実現などを予定しているとのこと。
詳細は4月13日に発表が予定されていますが、概要は下記の通り。
英国ロイヤル・バレエ団は、マリウス・プティパから、カナダのコンテンポラリー・ダンスの振付家クリスタル・パイトまでの3つの作品を上演するとのこと。
オペラは、『皇帝ティートの慈悲』。リチャード・ジョーンズによる新演出で、美術はオリヴィエ賞を受賞したウルツが手がけます。指揮はマーク・ウィグルスワースと発表されていますが、歌手については4月の発表となります。
また、5月の再開に先立ち、4月9日には、コロナ禍での劇場閉鎖期間中初の新制作となるワイルの『七つの大罪』と『小さなマハゴニー』を無観客で上演し、ライブ・ストリーミングを行います。この2本立てはオンラインでのみ視聴可能とのことです。
さらに、超現実(ハイパー・リアリティ)における世界初のオペラも。英国ロイヤル・オペラハウスのイノベーション・プログラム「オーディエンス・ラボ(Audience Labs)」とロンドン大学のロイヤル・ホロウェイのコラボレーションにより実現するものです。女性主導のクリエイティブ・チームによって開発された15分のハイパー・リアリティ・オペラは、バーチャル・リアリティと多感覚を組み合わせて"オペラ・ターディス"*に足を踏み入れ、歌に重ねられた詩によって導かれる夢のような旅を体験するものだそうです。言葉での説明は理解するには難しいかもしれません。
「オーディエンス・ラボ」では、革新的なテクノロジーを使用し、時代を超越した物語を新しい方法で伝えることを目指しています。コロナ禍において、物理的にステージが閉じられたときに、テクノロジーによる新しい種類の"ステージ"を提供する方法を模索しているのです。ハイパー・リアリティ・オペラは、コロナ禍が生み出した最先端パフォーマンスといえそうです。

*"オペラ・ターディス"


ターディス(TARDIS)とはイギリスBBC制作のSFドラマシリーズ『ドクター・フー』に登場する次元超越時空移動装置。Time And Relative Dimension In Spaceの略で、日本語で表すと「宇宙内の時間と相対的な次元を移動する装置」、いわゆるタイムマシン。これを用いた鑑賞体験を"オペラ・ターディス"と表現していると思われる。

リッカルド・ムーティ&ケルビーニ管とイタリア・ツアー

ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートで2021年の幕開けを飾ったリッカルド・ムーティ。年明けから春にかけて、例年ならマエストロ・ムーティは音楽監督を務めるシカゴ交響楽団でのコンサート活動が続く時期ですが、いうまでもなく今年はすべてキャンセルに。とはいえ、マエストロの音楽への意欲は止まることはありません。
3月は、ルイージ・ケルビーニ・ジョヴァニーレ管弦楽団とのツアーです。3月10日のベルガモを皮切りに、3月26日ナポリ、3月28日パレルモと続きます。3つのコンサートは、それぞれ異なるプログラムで、マエストロと若き精鋭たちのエネルギーがうかがえます。
ムーティは2016年にベルガモのドニゼッティ劇場で『ドン・パスクワーレ』を振り、キャリア50周年を祝しました。そのときマエストロは「あなた方全員に希望と笑顔を残したい」と長くキャリアを築いて来られた理由を説明したそうです。その同じ場所での今年、マエストロの言葉は、現在最も必要かつ重要な言葉となったといえるでしょう。
各地でのプログラムは、以下の通り。
ベルガモ:ドニゼッティ作曲『ドン・パスクワーレ』シンフォニア、ベートーヴェン作曲交響曲第3番「英雄」
ナポリ:メルカダンテ作曲「二人のフィガロ」、シューベルト作曲交響曲第9番「ザ・グレイト」
パレルモ:シューベルト作曲交響曲第3番、ドヴォルザーク作曲交響曲第9番「新世界より」

3つの演奏はラヴェンナ音楽祭のサイトにて3月21日から順次視聴できます。
◾️ラヴェンナ音楽祭LIVE STREAM
https://www.ravennafestival.live/en/live-stream-eng/