2024/06/05(水)Vol.495
2024/06/05(水) | |
2024年06月05日号 | |
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Photo: Tristram Kentonr / ROH
6月の英国ロイヤル・オペラ日本公演を5週間後に控えた5月16日、本拠地ロンドンのロイヤル・オペラハウスでは「アントニオ・パッパーノ・ガラ」が開催されました。この催しは今シーズンで音楽監督を退任するパッパーノの功績を讃える祝賀と送別のスペシャル・イベントで、彼と共に仕事をした歌手たちが集結し、パッパーノへの敬意と愛情を表すコンサートとなったようです。そしてさらに、チャールズ国王が舞台上に登場するというサプライズも、英国におけるパッパーノという音楽家の存在の大きさを示すこととなりました。
すでに周知の通り、パッパーノは英国ロイヤル・オペラにおいて歴代最長の22年間、音楽監督を務めてきました。この間同劇場で指揮した公演は700回以上にのぼるそうです。若手として彼と共演し、いまや世界のトップスターとなっている歌手も数知れません。今回のガラ公演には、ディアナ・ダムラウ、エルモネラ・ヤオ、リセット・オロペサ、ソンドラ・ラドヴァノフスキー、ネイディーン・シエラ、ヨナス・カウフマン、カルロス・アルバレス、アマルトゥブシン・エンクバート、ジェラルド・フィンリー、ブリン・ターフェルといった超一流の歌手たちほか、新進気鋭の歌手も含め、オーケストラ曲を含めた計18曲が演奏されました。
パッパーノは歌手たちにライバル心を起こさせるソロのアリアではなく、デュエットやアンサンブルを依頼したのだそう。プログラムの中心はイタリアものでしたが、自身にとって馴染み深い作品がある一方、これまで一度も手がけたことのない作品(『こうもり』『ドン・パスクワーレ』)、そしてこの25年間は演奏していない『ばらの騎士』を含むあらゆる作品を指揮しました。ロイヤル・オペラでは、目下 パッパーノ指揮のもと《ニーベルングの指環》の新制作が進行中ですが、このガラ公演ではワーグナーは1曲もプログラムされませんでした。パッパーノがもし、「自分が、自分が」と自身を押し出すタイプであったとしたら、おそらくワーグナーもプログラムしたかもしれません。ひたすらオペラに献身するパッパーノらしいプログラムであり、あらためて22年にもわたって音楽監督という重責を果たせたのは、このパッパーノだからできたことなのだと感じさせます。
さて、パッパーノを讃えるガラ公演について、ロンドンならではの盛り上がりを見せたニュースが、チャールズ国王の登場でした。ミソとなるのは"ご臨席"ではなく、舞台への"登場"だったこと。国王は、パッパーノや出演歌手たちとともに舞台に登場し熱狂的な拍手で迎えられたとのことです。パッパーノは昨年5月には、チャールズ国王の戴冠式で指揮をとり、国王への賞賛を表しましたが、今回は国王がパッパーノを祝福することとなりました。
ガラ公演を終えたパッパーノは、国王への感謝とともにこのガラ公演を「コヴェント・ガーデンでの私の時間へのトリビュートであると同時に、歌、ドラマ、そして私たちを変え人生を豊かにする音楽の力を祝う夜でもあった」と語っています。
なお、この公演の収益は、ロイヤル・オペラハウス・コヴェント・ガーデン財団に寄付されるそうです。
このガラ公演は、英国ロイヤル・オペラ&音楽監督アントニオ・パッパーノの最終章の幕開け。6月の日本公演『リゴレット』と『トゥーランドット』は、その掉尾を飾るべく、英国ロイヤル・オペラ&音楽監督パッパーノの全身全霊が込められた公演となるはず!
ネイディーン・シエラ、シャビエル・アンドゥアーガ
『リゴレット』より
Photo: Tristram Kenton / ROH