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2024/06/19(水)Vol.496

モーリス・ベジャール・バレエ団2024年日本公演 

ダンサー・インタビュー(2)
2024/06/19(水)
2024年06月19日号
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バレエ

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モーリス・ベジャール・バレエ団2024年日本公演 

ダンサー・インタビュー(2)

モーリス・ベジャール・バレエ団2024年日本公演に向けてのダンサー・インタビュー、シリーズ2回目は、生地のバレエ団とバレエ学校への貢献を経てモーリス・ベジャール・バレエ団(BBL)に復帰したオスカー・シャコンといまやBBLの日本人ダンサーのなかでも一番のベテランとして活躍する大貫真幹。フリーライターの小田島久恵さんによる"ベジャール・ダンサー"2人のインタビューです。

※このインタビューは2023年12月に実施しました。

オスカー・シャコン
Photo: NBS

BBLのスターダンサーとしてカリスマ的なオーラで人気を集めていたオスカー・シャコン(2004年入団)がカンパニーに復帰したニュースは、多くのファンを沸かせたはず。コロンビア出身で、驚異的な技術とハイセンスな知性を備えたシャコンは生粋の「ベジャール・ダンサー」だ。2023年12月のローザンヌ公演では『コンセルト・アン・レ』でソロ・パートを踊り、理想的なパフォーマンスで喝采を浴びた。情熱的なシャコンとのインタビューは長時間に及び、パートナーの元ベジャール・ダンサー、カテリーナ・シャルキナと子供たちの様子もスマートフォンで見せてくれた。

大貫 真幹
Photo: NBS

カンパニーの屋台骨として『バレエ・フォー・ライフ』の「ミリオネア・ワルツ」やジル・ロマン作品の重要なパート踊ってきた大貫真幹(2010年入団)も、ベジャールがつねに必要としてきた日本人ダンサー。淡々とした語り口に、プロフェッショナルとしての信念を感じさせる人だった。

「BBLに帰ってきたときから日本の舞台に立てることを楽しみにしてきたし、大きなモチベーションになっています。僕にとって新しい人生が始まったような気持ちです」オスカー・シャコン

――オスカーさんはカンパニーの中でも生前のベジャールさんを知る数少ないダンサーです。ベジャールさんとの思い出を教えてください。

シャコン:すべての瞬間が本当に忘れ難い思い出です。モーリスの隣にいると彼の仕事の哲学や、カンパニーが50年以上続いてきた理由が常に感じられました。ひとつのカンパニーが50年も続くということ自体が、ありふれたことではないですから。重要な役を踊らせていただいただけではなく、一流の芸術家やビッグネームのゲストたちが集まるスペシャルナイトにも呼んでもらい、そこで彼らと素晴らしい交流をはかることができました。モーリスの特別なコネクションをシェアしてもらったことは、その後の自分にとっても大きな宝物になっています。

『バレエ・フォー・ライフ』オスカー・シャコン
Photo: BBL-Gregory Batardon

――オスカーさんが2022年にカンパニーに戻ってきたことは、観客にとっても大きな喜びです!

シャコン:本当に幸運だったと思います。ジルが電話をかけてきて、僕がBBLに戻ることを認めてくれました。ベジャールさんが亡くなって16年が経ち、カンパニーとしてもこれから立ち向かっていかなければならない局面があり、僕自身、カンパニーを成長させていく役目を担っていると感じています。それ以上に、ここで踊れることで、再び自分のクオリティーや才能に関して自信を与えてもらいました。2016年から6年間、カンパニーから離れていましたが、その時間も僕にとっては大きな成長のプロセスで、自分は何者で、自分の人生の本質とは何かを知ることができたと思います。僕はプライベートでは子供もいますけど、子供に対して、ダンスがプロフェッショナルな文化として認められていて、ダンスで生活できることを見せていくことは重要なのです。

――9月の日本ツアーでは、日本のファンは久しぶりにオスカーさんのダンスを見ることができます。

シャコン:言葉では語りつくせない喜びです!  今の僕は最高にモチベーションが高まっていて、人生全体がダンスにフォーカスされていて、それをキープするための毎日のハードワークにも喜びを感じています。舞台の上で生きている喜びを教えてくれたのはモーリスですが、彼が日本と特別なつながりを感じていたということも、今とても重要に感じられるんです。BBLに帰ってきたときから日本の舞台に立てることを楽しみにしてきたし、大きなモチベーションになっています。不思議な感覚なのですが、モーリスが天国からこの成り行きを見守ってくれているように思えるんです。ポジティブな雰囲気に包まれていて、僕にとって新しい人生が始まったような気持ちです。

「バレエ作品は5回10回踊ったくらいでは形にならないし、50回、あるいは100回くらい踊って初めて形になるのだと思います」大貫真幹

――大貫さんは2010年にBBLに入団する前にはシカゴのジョフリー・バレエ、スペインのビクトル・ウラーテ・バレエ団で踊られていました。BBLは13年と長くなりましたね。

大貫:生前のベジャールさんにお会いすることはできなかったのですが、僕の感想としては、ベジャール作品は音楽がいいですし、ベジャール特有の動きというものもあって、作品によってストーリーもあったりなかったりと様々ですが.....とにかく音に対する振りが緻密なんです。ベジャールさんは生涯に300くらいの作品を振付けて、現在頻繁に上演されるのは30作品くらい。完成度の高い作品しか残らないですから、一人の振付家で30作品も今の時代で再演されているのは凄いことだと思います。

『バレエ・フォー・ライフ』大貫 真幹
Photo: BBL-Gregory Batardon

――大貫さんにとって思い入れのあるベジャール作品はありますか?

大貫:ベジャール作品は全部好きですよ。赤も青もあれば、黄色もいいなと思うように。踊りやすい、踊りにくいというのはありますけど。僕自身の思い入れというより、身体を鍛えて振付家の作ったものをしっかりやりたいということがあるだけで、こういうふうに表現したいとか野暮なことは考えたことはないです。バレエ作品は5回10回踊ったくらいでは形にならないし、50回、あるいは100回くらい踊って初めて形になるのだと思います。そういう意味では、『バレエ・フォー・ライフ』の「ミリオネア・ワルツ」は50 回以上踊りましたし、入団して2年目の頃は『ディオニュソス』も数えきれないほど踊りました。

――BBLはダンサーの入れ替わりも多いですが、大貫さんが長く踊ってこられたモチベーションはなんでしょう?

大貫:ダンサーの入れ替わりが激しいのはどのカンパニーも同じです。僕の場合、ベジャールの作品をジル・ロマンから習うということが興味深かったのかもしれません。ジルの、踊りに対する神経質なほど緻密な美意識を近くで学んでみたいと思ったんです。2016年の冬にアキレス腱を断裂して、手術とリハビリに9カ月かかりましたが、復帰してからの方がハードで、踊り方を変えなければ続けることが難しかった。ケガをする前と同じように踊ろうとすると力が入りすぎてしまうので、探り探りで新しい左足の使い方を開発して、最近になってようやく調子が出てきたなと思います。ローザンヌという街も静かで綺麗ですし、ツアーから疲れて帰ってくるとほっとしますね。

取材・文 小田島久恵 フリーライター

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モーリス・ベジャール・バレエ団2024年 日本公演
Aプロ:バレエ・フォー・ライフ
Bプロ:「ボレロ」ほか

公演日

【東京公演】

Aプロ:
モーリス・ベジャール振付『バレエ・フォー・ライフ』

9月21日(土)13:30
9月22日(日)13:30
9月22日(日)18:00
9月23日(月・祝)13:30
会場:東京文化会館

Bプロ:
モーリス・ベジャール振付「ボレロ」
モーリス・ベジャール振付「2人のためのアダージオ」
モーリス・ベジャール振付「コンセルト・アン・レ」
ジル・ロマン振付「だから踊ろう...!」

9月27日(金)19:00
9月28日(土)13:30
9月28日(土)18:00
9月29日(日)13:30
会場:東京文化会館

※音楽は特別録音による音源を使用します。

入場料(東京公演) [税込]

S=¥23,000  A=¥16,000  B=¥14,000 C=¥11,000  D=¥7,000  E=¥6,000
U25シート=¥3,000 SP*=¥21,000
*SP席は1階LRブロックの端寄りのエリアです。舞台に近いお席ですが、演出のため一部見切れがございます。予めご了承の上お求めください。

【西宮・札幌公演】

『バレエ・フォー・ライフ』

10月2日(水)
会場:兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール
お問い合わせ:芸術文化センターチケットオフィス
0798-68-0255 (10:00〜17:00 月曜休み ※祝日の場合翌日)
https://www.gcenter-hyogo.jp/

10月6日(日)
会場:札幌文化芸術劇場hitaru
お問い合わせ:道新プレイガイド
0570-00-3871 (10:00〜17:00 日曜定休)
https://doshin-playguide.jp/