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2024/06/05(水)Vol.495

モーリス・ベジャール・バレエ団2024年日本公演
ダンサー・インタビュー(1)
2024/06/05(水)
2024年06月05日号
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バレエ

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モーリス・ベジャール・バレエ団2024年日本公演
ダンサー・インタビュー(1)

9月の日本公演に向け、モーリス・ベジャール・バレエ団(BBL)のダンサー・インタビューをシリーズでご紹介します。まずはじめは、この3月に暫定的に芸術監督に就任したジュリアン・ファヴローとエリザベット・ロスから。

『2人のためのアダージオ』エリザベット・ロス、ジュリアン・ファヴロー
Photo: BBL - Gregory Batardon

モーリス・ベジャール・バレエ団には、生前のベジャールを知る貴重なダンサーが数名在籍しているが、中でもジュリアン・ファヴロー(1995年入団)とエリサベット・ロス(1997年入団)は、ベジャールが大切な役を振付けてきた、世界中の観客にとっても人気の高いダンサーである。2023年12月中旬、ローザンヌでのシーズン・プログラム公演の初日を終えた翌日に、カンパニーのカフェテリアで二人にインタビューをした。

(※編集部注:このインタビューはファブローが3月に暫定的に芸術監督に就任する以前に行われました)

「ベジャールに初めて会ったとき、ここは自分にとって正しい場所だと瞬間的に理解したことを覚えているよ」ジュリアン・ファヴロー

――カンパニーの中でもベテランダンサーになってしまいましたね。

ジュリアン・ファヴロー:他のダンサーは皆若いけど、僕は昔からいるジュリアン(笑)。実は2年前にアキレス腱を切ってしまって、その後1年ほどはリハビリをしていたんだ。コロナや怪我が原因で引退してしまうのは避けたかったので、よく食べ、よく眠り、よく働いて復帰しました。遺伝子的に恵まれているのか、肉体的な衰えを感じたことはないし、その点では両親に感謝しているよ。若いダンサーたちと比べると、僕は違うジェネレーションのダンサーだと思うけど..... 新しい人たちは2年くらいで去ってしまうことが多く、自分の理想としては一つのカンパニーにできるだけ長くいるほうがいいと考えているんだ。そうしないと、アイコン的なダンサーにはなれない。若いダンサーたちからは、色々質問されることが多いし、それが嬉しくもある。ベジャール・スタイルを継承していく役目があるからね。

――ジュリアンさんがBBLに入団したのは17歳のときでした。

ファヴロー:ベジャールに初めて会ったとき、ここは自分にとって正しい場所だと瞬間的に理解したことを覚えているよ。芸術的な素質がフィットすると確信したけど、舞台を作りあげていくには、裏では大変なこともたくさんあった。ベジャールは厳密な人で、「違う、違う、違う」と何度も繰り返しリハーサルをして「君はキュートでナイスだけど、もっとバレエ以外のところからインスピレーションを得るべきだ」と言うんだ。当時の自分はまだ若くて、音楽も聴いていないし本も読んでいないし、何も返すものがなかったからね。ベジャールはダンサーとの意見の交換をとても大切にしていたよ。

『バレエ・フォー・ライフ』ジュリアン・ファヴロー(フレディ)
Photo: BBL-Guillermo Mendo Murillo

――『バレエ・フォー・ライフ』も10代の頃からフレディ役を踊っていましたね。そして今も踊り続けています。

ファヴロー:育ったから(笑)、だいぶ変わったと思う。20年前は花火みたいに踊っていたと思うけど、バレエのキャラクターも僕と一緒に成長したし、今では動きを抑えることで逆にパワフルになれるという経験をしている。この役は大好きで、僕自身、フレディがキャリアを終えた年齢に近づいてきているから、そういう意味でも面白い。25歳のときと45歳のときと、同じ役を踊っているというのはとても興味深いことなんだ。フレディ役も『2人のためのアダージオ』のマルローも、自分が年を重ねたことで、少ない動きでも感情やパワーを表現することができるようになった。

――ベジャールのことを思い出しますか?

ファヴロー:いつも(笑)。彼のスタイル、彼の思想..... 忘れたことはないです。もしベジャールがいたら、「君はこんなふうにやるべきだ」と言ってくれたと想像しています。最高の演技とは「この役が自分のために作られている」と感じさせることだ、と語っていたのを思い出すんだ。

「今ではここをホームだと思っていて、その理由はダンスだけでなくダンスと演劇的なものが両立しているからなんです」エリザベット・ロス

――エリザベットさんがBBLに移籍してきたのは97年のことでした。こんなに長くローザンヌにいると予想していましたか?

エリザベット・ロス:全然(笑)。それまでいたカンパニーがクラシックすぎるなと思ってここに来て、1年くらいやってみようと思っていたんです。今ではここをホームだと思っていて、その理由はダンスだけでなくダンスと演劇的なものが両立しているからなんです。踊り続けていられるのは、トレーニングを続けていることもあるけれど、一番重要なのは精神ですね。私にとってダンスとは、自分の本質的なものを表現する手段なんです。

『バレエ・フォー・ライフ』中央:エリザベット・ロス、右端:ジュリアン・ファヴロー
Photo: BBL- Ilia Chkolnik

――ベジャールさんはどんな方でしたか?

ロス:とても大きな質問です(笑)。私にとっては..... 特別な人です。インスピレーションがあって、いくつものことを同時に考えていたし、同時に言うこともできた。彼にはたくさんの面がありましたね。小さな子供みたいに愉快な面もあれば、本当にシンプルなところもあったし、ファニーな面もあった。彼に会った人は皆、あの鋭い目が印象に残ると思うんですけど、それだけでなく、お父さんみたいだったり、おじいちゃんみたいだったり、というところも知っています。ダンサーにチャレンジさせることが好きで、特に演じるということに関して「やってみて」「当日のサプライズを楽しみにしているよ」と言われていました。もちろん成功させるんですが、いつも袖で「わーっ」と喜ぶ声が聞こえてくるんです。

――すごい! エリザベットさんは生前のベジャールにとってのミューズであり、たくさんの役を振付けられてきましたね。

ロス:彼の振付には自由があって、『ブレルとバルバラ』は、ツアー中の午後に「ちょっと足りないんだよね」「今晩のために何か作ろう」と、その午後のリハーサルで作ったものを夜の本番で踊ったこともありました。背が高いから、低いから、ということで振付を割り当てることもなかったし、普段見せている自分の姿が彼の振付になって返って来る面もありました。

――日本へは何回来たか覚えていますか?

ロス:数えていませんが、日本はいるだけで幸せ。人も好きだし街も好きだし、食べ物も自然も好きです。モダンと伝統が同居しているところもいいですね。自分が他人に対してリスペクトを持っていれば、どんなクレイジーなことをしても許される、というところも好き。セレモニーを守りつつ、テクノロジーも発達している。9月に日本に再び行けることをとても楽しみにしています。

取材・文 小田島久恵 フリーライター

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モーリス・ベジャール・バレエ団2024年 日本公演
Aプロ:バレエ・フォー・ライフ
Bプロ:「ボレロ」ほか

公演日

【東京公演】

Aプロ:
モーリス・ベジャール振付『バレエ・フォー・ライフ』

9月21日(土)13:30
9月22日(日)13:30
9月22日(日)18:00
9月23日(月・祝)13:30
会場:東京文化会館

Bプロ:
モーリス・ベジャール振付「ボレロ」
モーリス・ベジャール振付「2人のためのアダージオ」
モーリス・ベジャール振付「コンセルト・アン・レ」
ジル・ロマン振付「だから踊ろう...!」

9月27日(金)19:00
9月28日(土)13:30
9月28日(土)18:00
9月29日(日)13:30
会場:東京文化会館

※音楽は特別録音による音源を使用します。

入場料(東京公演) [税込]

S=¥23,000  A=¥16,000  B=¥14,000 C=¥11,000  D=¥7,000  E=¥6,000
U25シート=¥3,000 SP*=¥21,000
*SP席は1階LRブロックの端寄りのエリアです。舞台に近いお席ですが、演出のため一部見切れがございます。予めご了承の上お求めください。

【西宮・札幌公演】

『バレエ・フォー・ライフ』

10月2日(水)
会場:兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール
お問い合わせ:芸術文化センターチケットオフィス
0798-68-0255 (10:00〜17:00 月曜休み ※祝日の場合翌日)
https://www.gcenter-hyogo.jp/

10月6日(日)
会場:札幌文化芸術劇場hitaru
お問い合わせ:道新プレイガイド
0570-00-3871 (10:00〜17:00 日曜定休)
https://doshin-playguide.jp/