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2024/05/22(水)Vol.494

モーリス・ベジャール・バレエ団2024年日本公演
Aプロ、Bプロの魅力紹介
2024/05/22(水)
2024年05月22日号
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バレエ

モーリス・ベジャール・バレエ団2024年日本公演
Aプロ、Bプロの魅力紹介

2021年、コロナ禍にあっても、来日してファンを喜ばせたモーリス・ベジャール・バレエ団(BBL)。3年ぶりの日本公演Aプロ、Bプロの魅力を、"BBLの追っかけ"を体験したフリーライターの小田島久恵さんに紹介してもらいました。

Aプロは熱狂の『バレエ・フォー・ライフ』、
Bプロは新作から不朽の名作まで
『今夜も僕を驚かせてくれ』というベジャールの言葉が舞台へ!

9月に3年ぶり、19回目となる日本公演を行うモーリス・ベジャール・バレエ団。東京公演のAプログラム、Bプログラムが決定し、当初、西宮・札幌のみで上演される予定だった『バレエ・フォー・ライフ』が東京でも観られることになった。この演目を観るために遠征を計画していた首都圏のバレエ・ファンにとっては大変嬉しいニュースであり、初めて本作に触れる観客にも巨大な感動の嵐を呼び起こすこと必至である。
『バレエ・フォー・ライフ』は1998年の東京での初演から上演を重ねているが、何度観ても衝撃的で新しい。クイーンとフレディ・マーキュリーのソロ、モーツァルトの曲を使用し、40代の若さで亡くなったフレディ・マーキュリーとジョルジュ・ドンに捧げられている。「レディオ・ガ・ガ」「カインド・オブ・マジック」「ミリオネア・ワルツ」「ウィンターズ・テイル」といったマスターピース(17曲)に触発されてベジャールが作り上げたダンスは、当時70歳の巨匠が考えたものとは思えないほどクレイジーで、ベジャール・ファンのみならずクイーン好きのロック・ファンも驚愕させた。

『バレエ・フォー・ライフ』
Photo: Kiyonori Hasegawa

BBLが日本公演を実施した2004年、日本でこのバレエは上演されなかったので、筆者はイタリアのトリノまでバレエ団を追いかけたが、三日間の公演で日に日に観客の数が増え、最終日には会場のレージョ劇場が超満員になっていたのを思い出す。世界中に『バレエ・フォー・ライフ』のファンがいて、生と死について深く描かれた世界観に魅せられているのだ。10代からフレディ役を演じているジュリアン・ファヴローは2024年にカンパニーの新芸術監督に就任したが、何の奇跡か全く衰えないフレディ役を演じ続けている。ヴェルサーチによるデザインのコスチュームを次々と着替え、ゴージャスなロックスターに変身する彼の姿を再び観られると思うと胸が高鳴る。

『バレエ・フォー・ライフ』
Photo: Kiyonori Hasegawa

ベジャールが2007年に亡くなってから16年間カンパニーを率いてきたジル・ロマンが芸術監督の座から去ったことで、バレエ団は次の新しい時代に入った。ジル・ロマンは多くのオリジナル作品を創作し、来日の度に新作が披露されていたが、Bプロではジルによる『だから踊ろう...!』がプログラミングされている。若いダンサーのシンクロするムーヴメントが鮮やかで、タイトルからもポジティヴなメッセージが伝わってくる。

『だから踊ろう...!』
Photo: BBL- Gregory Batardon

Bプロでは不朽の名作『ボレロ』、ストラヴィンスキーのヴァイオリン協奏曲ニ調に振付けられた『コンセルト・アン・レ』、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタとともに踊られる『2人のためのアダージオ』のベジャールの3作も並ぶ。『2人のためのアダージオ』は1988年に東京で上演された『マルロー、あるいは神々の変貌』からの抜粋で、2023年12月のローザンヌ・ボーリュー劇場での公演ではベテランカップルのエリザベット・ロスとジュリアン・ファヴローが小粋で意味深な振付を踊った。この二人は長年踊っていることもあるが、ユーモアセンスが似ていて、お互いに面白い駆け引きをしながらパ・ド・ドゥを楽しんでいる。「ベジャールさんからいつも本番前に『今夜も僕を驚かせてくれ』と言われていたんです。それでびっくりするようなことをやると、公演後にとても嬉しそうでしたよ」と語るロス。1997年からカンパニーで主役級の役を踊ってきたが、今回もベジャール・ダンサーとしての円熟の境地を見せてくれそうだ。

『2人のためのアダージオ』エリザベット・ロス、ジュリアン・ファヴロー
Photo: BBL- Gregory Batardon

バランシンのプロットレス・バレエを彷彿させる『コンセルト・アン・レ』は1982年に振付けられた作品で、10人の女性ダンサーと2人の男性ダンサー、男女のカップルが、クラシック・バレエの理想的なシルエットをストイックに積み重ねていく。12月のローザンヌ公演ではメインのカップルの男性を、カンパニーに復帰した人気ダンサー、オスカー・シャコンが演じていて、ベジャール・ダンサーとしての揺るぎない魅力を見せつけていた。
『ボレロ』は言うまでもなく、男性群舞の「リズム」と主役ダンサーの「メロディ」が、ラヴェルの音楽をユニークに視覚化していくベジャールの代表作。新たに「メロディ」を踊るダンサーが登場する予感も。前回の来日がコロナ禍中であり、様々な不自由を克服しての公演だったことをと思うと、今回の来日ツアーは躍動的な雰囲気に包まれそうだ。

『コンセルト・アン・レ』
Photo: BBL- Gregory Batardon

取材・文 小田島久恵 フリーライター

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モーリス・ベジャール・バレエ団2024年 日本公演
Aプロ:バレエ・フォー・ライフ
Bプロ:「ボレロ」ほか

公演日

【東京公演】

Aプロ:
モーリス・ベジャール振付『バレエ・フォー・ライフ』

9月21日(土)
9月22日(日)
9月23日(月・祝)
会場:東京文化会館

Bプロ:
モーリス・ベジャール振付「ボレロ」
モーリス・ベジャール振付「2人のためのアダージオ」
モーリス・ベジャール振付「コンセルト・アン・レ」
ジル・ロマン振付「だから踊ろう...!」

9月27日(金)
9月28日(土)
9月29日(日)
会場:東京文化会館

※入場料については近日発表予定

【西宮・札幌公演】

『バレエ・フォー・ライフ』

10月2日(水)
会場:兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール
お問い合わせ:芸術文化センターチケットオフィス
0798-68-0255 (10:00〜17:00 月曜休み ※祝日の場合翌日)
https://www.gcenter-hyogo.jp/

10月6日(日)
会場:札幌文化芸術劇場hitaru
お問い合わせ:道新プレイガイド
0570-00-3871 (10:00〜17:00 日曜定休)
https://doshin-playguide.jp/