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Photo: Nobuhiko Hikiji

2023/06/07(水)Vol.471

〈オペラ座ガラ〉エトワールの復活!
マチアス・エイマン インタビュー
2023/06/07(水)
2023年06月07日号
バレエ
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Photo: Nobuhiko Hikiji

〈オペラ座ガラ〉エトワールの復活!
マチアス・エイマン インタビュー

持前の緻密な音楽性とテクニックに風格まで漂わせる、パリ・オペラ座エトワールの中心的な存在。2021年の世界バレエフェスティバル以来沈黙していたものの、この5月にパリで舞台復帰したマチアス・エイマンに、日本での〈オペラ座ガラ〉についてインタビュー!

「ヌレエフが観客に贈り物を与えていたことを、この公演によって僕たちが継続することができたら」

「初めてフロランスとスタジオで仕事をした時、ダンス言語や認識の違いからちょっと混乱させられた記憶が実はあるんですよ」。こう語り始めたマチアスは、〈オペラ座ガラ─ヌレエフ に捧ぐ─〉のアーティスティック・ディレクションを担当するフロランス・クレールにとって、参加メンバーの中で一番長い付き合いのダンサーだ。2013年、1年半ぶりの舞台復帰後に初めて踊る古典大作『眠れる森の美女』の公演前のことだった。
「それまで僕が築き上げたものを取り壊して、彼女が語ることに耳を傾けて多くのことをやり直しました。そのおかげで既得していたこととは別のことにエスプリが開かれて、多くの障壁から僕は解き放たれることができたのです」。

音楽を頼りにすること、パートナーと同じ言語で理解しあう。こういったことも彼女から学んだ。この時から彼は、再演も含めあらゆる作品においてフロランスの個人コーチを受けている。
「仕事のこともいろいろ話すけれど、それ以上に一人の女性として、母のようというか、彼女とは家庭的な関係といえます。僕が何よりも必要としている自信を彼女のおかげで得ることができるんです。彼女の素晴らしいのはダンサー個々に異なるレッスンができること。指導者として天賦の才が彼女にはありますね」

フロランスは自身も参加していたグループ公演〈ヌレエフ&フレンズ〉について、世界を舞台にした刺激的な仕事であり、また楽しい思い出であったとマチアスたちに話すことがある。フロランスのそうした体験を自分たちも経験してみたいというダンサーたちの願いが、この〈オペラ座ガラ─ヌレエフに捧ぐ─〉の出発点だった。

「彼女の話からダンサー、振付家というだけでなく人間としてのヌレエフを知ることができるんです。僕たちダンサーには彼への崇拝、敬意があります。彼が観客に贈り物を与えていたことを、この公演によって僕たちが継続することができたらと......」

Photo: Yuji Namba

彼がガラで踊る演目の1つは『薔薇の精』。これはヌレエフがマーゴ・フォンテインと踊った作品であり、またマチアスにとっても特別な意味のあるものなのだという。
「2007年に僕が初めて日本で踊った作品なんですよ。まだすごく若いとき、おそらくスジェだったんじゃないかな。バレエ・リュスにオマージュを捧げる東京バレエ団の公演〈ニジンスキーの伝説〉に当時の東京バレエ団代表の佐々木氏から招待されて、一人で日本に行きました。そんなことから、東京でまた踊れたらってずっと思っていたんです。今回のパートナーは若いスジェのクレマンス・グロス。将来を嘱望されているダンサーと一緒にスタジオでリハーサルをし、舞台を共にできるのがうれしいです」

『薔薇の精』より
(写真:本人提供)

現在、オペラ座ではレオノール・ボラックを相手に初役で踊る『マノン』の稽古中である。マクミラン作品も初めてなら、演劇性を要される主役を踊るのも初めてなので、この新しい挑戦にとても興奮している。彼は5月10日に〈モーリス・ベジャール〉公演で『ボレロ』を踊って、大きな感動をもって2年ぶりにパリ・オペラ座で舞台復帰を果たしたばかりである。2017年に初役で踊った作品で、この復帰にむけて彼のコーチを務めたのはもちろんフロランスだ。
「『ボレロ』は激しい作品です。長い不在の後に果たして自分にできるだろうか、という身体面での不安があったし、疑問も恐怖も......。持久力についてはフロランスと毎日少しずつ準備をしてゆき、本番へと向かいました。この公演では芸術監督のジョゼ・マルティネスに深く感謝しています。彼は僕の状況を理解し、とても忍耐強くて寛大でした。公演の二晩の配役を空欄にし、"ステージ・リハーサルの後に踊る、踊らないを決めてくれればいい"と待ってくれました。本番では自分が今できる最良のものをみせようと、テーブルの上へ。僕の不在中に入団した新しい顔ぶれが放つポジティブなエネルギーが感じられ、大きな支えとなりました」

Photo: Nobuhiko Hikiji

終演後はまるでボクシングでノックアウトされたような状態に。スタンディング・オベーションの記憶は曖昧だけれど、大きく温かな波に包まれた感覚が記憶に残っている。
「SNSで近況を発信するタイプではないので、大勢の人々に心配をかけたことをお詫びします。僕のキャリアの新しい段階が始まり、日本でこのガラの会場に集まる方々の前で踊れるのはとても幸せです。失望させることのないよう願っています」

取材・文 大村真理子 パリ在住、エディター

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ルドルフ・ヌレエフ 没後30年記念
〈オペラ座ガラーヌレエフに捧ぐー〉

公演日

【Aプロ】
7月26日(水)19:00
7月27日(木)19:00

【Bプロ】
7月29日(土)13:30
7月29日(土)18:00
7月30日(日)14:00

会場:東京文化会館(上野)

入場料[税込]

S=¥18,000 A=¥16,000 B=¥14,000
C=¥10,000 D=¥7,000 E=¥5,000
U25シート=¥3,000
*2演目セット券[S,A,B席]あり
*ペア割引あり[S,A,B席]
*親子割引[S,A,B席]あり