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2018/10/03 2018:10:03:15:09:10

エリサ・バデネス(シュツットガルト・バレエ団) スペシャル・インタビュー

 去る8月に開催されたバレエ界最大規模の公演、第15回世界バレエフェスティバル。今回は11名ものダンサーが初参加! まさに新しい風を感じたフェスティバルでしたが、その中でもエリサ・バデネスの太陽のように明るいオーラと生き生きとした踊り、演技に心動かされた方も多いのではないでしょうか?

 そんなバデネスは所属するシュツットガルト・バレエ団の公演で間もなく日本にかえってきます。フェスティバルの最中に行われたスペシャル・インタビューでは秋の日本公演についてたっぷりと語ってくれました。ぜひご一読ください。


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クランコの振付は人間の感情に忠実で、私は自分が演じているのだと意識することなく、私自身のままで生き、恋をすることができます



──出演される2作品のうち、まずは『オネーギン』についてお聞きします。バデネスさんは初日にオリガを、そして3日目にはタチヤーナを踊られますね。

 ええ、今回は二役です。オリガは何度も踊っているけれど、タチヤーナは前回の日本ツアーのときに初めて踊って以来、今回でまだ3回目。東京でお見せするのは初めてですし、舞台を経験するごとに近づいていける役だと思っているから、本当にワクワクしています。しかも今回は、新しいパートナーと一緒。クランコの振付は人間の感情に忠実で、私は自分が演じているのだと意識することなく、私自身のままで生き、恋をすることができます。その上オネーギン役がマチューなら、舞台上で恋に落ちるのは簡単ね!(笑)


──マチュー・ガニオさんとは、今回の共演についてもう何かお話をされたのですか?

 世界バレエフェスティバルの舞台裏で会って、リハーサルが楽しみだねって言い合いました。パートナーを組むのは初めてですが、2年前にシュツットガルトでアリシア・アマトリアンと踊っているのを観たときも、そしてフェスティバルの『マノン』でも本当に美しかった! パリでのオネーギンもとても素晴らしかったと聞きますから、そんなダンサーと踊れる私はなんて幸せなんだろうって思います。


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──パートナーといえば、『白鳥の湖』で組まれるアドナイ・ソアレス・ダ・シルヴァさんは、今回が初役だそうですね。

 そうなんです。まだ若いけれど、びっくりするほど素晴らしいテクニックを持ったダンサーだから、日本の皆さんは絶対に観るべきね(笑)。ラティーノ特有の情熱の持ち主でもあるから、私たちは相性がいいと思います。小さなころから一緒に踊っていたダニエル・カマルゴがカンパニーを去ったときはとても悲しかったけれど、今はレンスキーを踊るデヴィッド・ムーアがいてダニエルもいて、ゲストのマチューまでいる。役を自由に表現するために、私にとって信頼できるパートナーは不可欠な存在だから、本当にハッピーです。


──オデット/オディール役について、バデネスさんの解釈を教えてください。

 オデットは、女王としての強さを持っている反面、恋に落ちることに対する恐怖心も抱いている女性。一方のオディールは、ひとことで言えばファム・ファタルですよね。意地悪になれる役だから、演じるのはとても楽しいです(笑)。初めて踊った19歳のときは、特にオデットがとても難しく感じられたのだけど、今年に入って再び踊ったときは自然と役に入り込むことができたから、日本ではより成熟した表現をお見せできると思います。


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クランコの「白鳥の湖」はオデットの物語であると同時にジークフリートの物語でもある



──『白鳥の湖』にはいろいろなバージョンがあるなかで、クランコ版の魅力はどんなところにあると思われますか?

 オデットの物語であると同時にジークフリートの物語でもある、そのバランスがとても素敵だと思っています。私は特に、ジークフリートが悲劇的な結末を迎える第四幕が、悲しいけれど美しくて大好き。振付に関しては、「ああクランコだ!」っていうトリッキーな箇所がいくつかあるけれど(笑)、基本的には皆さんがよく知っている『白鳥の湖』とよく似ています。誰が観ても、必ず心打たれるところがあるのがクランコ版という気がしますね。


──最後に、新芸術監督のタマシュ・デートリッヒさんについても聞かせてください。この交替を、バデネスさんはどのように受け止めていらっしゃるのでしょうか。

 彼はこれまでにも長い間、第二ディレクターとしてカンパニーの指導にあたってくれていましたから、何も心配していないですね。大切な伝統はしっかり保ちながら、新しいレパートリーも増やしていってくれるのではないかしら。シュツットガルト・バレエ団は、私にとって家族のようなカンパニー。家族みんなで、未来に向かって一緒に新たな一歩を踏み出すことができるのは、とても素敵なことだと感じています。


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取材・文:町田麻子(フリーライター)



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