いま、ベジャール・ルネサンス!

2017年、バレエ界に革命をもたらした天才振付家モーリス・ベジャールがこの世を去って10年。

「バレエ界の革命児」「肉体の魔術師」「20世紀最大の巨匠」などさまざまに讃えられたベジャールは、バレエの古い美意識の踏襲を否定し、旺盛な好奇心と膨大な知識をもとに、演劇・映画・文学・思想・宗教など異分野の要素や手法を取り入れた革新的なバレエを創造しました。しかしベジャールの偉大さは何よりも、人間の生と死を見つめ、それをダンスをもって探求したことにあります。アート・シーンに衝撃を与えた彼の創作は1970年代後半に日本に上陸。またたく間に鋭い感性をもつ人々を魅了し、ブームを巻き起こしました。

そのベジャール没後10年記念シリーズの第一弾として、モーリス・ベジャール・バレエ団の3年ぶり17度目の日本公演を開催します。現在のモーリス・ベジャール・バレエ団は、長年ベジャール・ダンサーとして活躍したジル・ロマンが師の志を受けて芸術監督となり、ベジャールの作品を踊り継ぐとともに、現代人の心に触れる新たなダンスを展開しています。

Aプロでは、ベジャールが敬愛した音楽家の一人、モーツァルトの傑作オペラを、その天上の音楽とともに巧みにダンスで表現した「魔笛」を上演。Bプロでは、ベジャールの代名詞的な傑作である「ボレロ」、シャンソン歌手エディット・ピアフを題材とした「ピアフ」とともに、現・芸術監督ジル・ロマンの近作「アニマ・ブルース」と「兄弟」を上演します。

バレエを現代人の芸術に変えたベジャールの精神とともに、その遺志を継ぐ者たちの芸術を味わう〈ベジャール・ルネッサンス〉ともいえる公演にご期待ください!

Photo:Yoshihiro Kawaguchi

モーリス・ベジャール
(1927-2007)

哲学者の父のもとマルセイユに生まれる。パリで自らのカンパニーを立ち上げ、振付家として活動を始めた。1959年ブリュッセルのモネ王立劇場で『春の祭典』の衝撃的な成功をきっかけに、翌年「20世紀バレエ団」を設立。87年に本拠地をスイスのローザンヌに移して名称を現在のものに改めた。死の直前まで精力的に取り組んだ創作の数は300をゆうに超す。