イントロダクション

 バレエの伝統を踏まえながら、そこに新しい時代の美意識と卓越したアイデアを注ぎ込み、現代人の物語を紡ぎだす振付家ジャン=クリストフ・マイヨー。彼がその手腕をもっとも発揮するのが古典バレエの再創作であり、2011年に発表されたこの「LAC~白鳥の湖~」はマイヨーの最高傑作との呼び声も高い作品です。
 プロローグ、白鳥姫の悲しい運命を表す「白鳥の湖」の有名な導入曲にのせて語られるのは、主人公の王子の幼少期の出来事です。両親の愛のもと無垢な少女に出会った幸福感と、それが“夜の女王”によって一瞬にして奪われた恐怖…。こうして幼な心に相克の感情を刻印された王子の物語は、王族である両親と悪魔に代わり登場する“夜の女王”との危険な関係をサブストーリーとしながら、彼らの影響下にある王子と白鳥、夜の女王の娘である黒鳥が壮絶なトライアングルを演じながら神話的ともいえる展開をみせ、見る者の心を揺さぶり、やがて感動で包んでいくのです。
 腕や身体を波打たせながら踊られる、スピード感あふれる流麗で躍動的なダンス。衣裳と腕に羽をあしらった白鳥たちの扮装やファッショナブルな宮廷の人々のドレス。湖におこる嵐を暗示させる巨大な布の装置をはじめ、振付にも美術にも緻密な美意識が貫かれた舞台は、クラシック・バレエ愛好者、ダンス鑑賞初心者を問わず魅了します。現代バレエの王道をゆく鬼才振付家の粋をきわめた芸術と精鋭ダンサーたちの妙技を、ぞんぶんにお楽しみください!

 王子は幼少時、家族とのピクニックで無垢な少女に出会うが、彼女は“夜の女王”にさらわれてしまう。
 時が過ぎ、適齢期を迎えた王子のために王と王妃が舞踏会を準備する。候補の女性たちが次々登場し、夜の女王は娘である黒鳥を連れて現れる。しかし突然ノスタルジーにとらわれた王子は、すべての女性を拒絶する。
 森に迷い込んだ王子は、白鳥たちの一人が何かを訴えかけるのを見る。夜になり、白鳥は人間の女性に変身する。それは幼い日のピクニックで会った少女だった。二人は恋に落ち、王子は彼女に愛を誓う。翌日の宮廷の舞踏会。そこに白鳥が現れ、王子は皆に彼女を結婚相手として告げようとする。王と王妃は喜ぶが、しかしいつの間にか夜の女王が自分の娘と白鳥を入れ替えていた! 裏切られた娘は去り、王子は湖へと彼女の後を追いかけていくが…。

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