ルオンゴ、ドット、ポーリ、ローマ歌劇場日本公演出演歌手たち活躍の近況 イタリアレポート 美声、容姿端麗が魅力 アレッサンドロ・ルオンゴ 美形の演技派 フランチェスカ・ドット 存在感を増す正統派テノール アントニオ・ポーリ

 秋のイタリアを旅し、ローマ歌劇場とフェニーチェ歌劇場を訪ねた。ローマではちょうど来日演目『椿姫』も上演中だったが、日程の都合もあり、観たのは珍しいオーベール作曲の『フーラ・ディアボロ』だった。ローマ歌劇場は活気があり、人気の演目とあって、この日はほぼ満席。題名役の高音テノール、ジョン・オズボーンが大活躍して、楽しい舞台を繰り広げた。最先端の3D映像を使ったまるでアニメのような抱腹絶倒の演出で、観客は大喜び。色彩も派手でしゃれていて笑いも爽やか。さすがオペラにおけるイタリアの底力、伝統の奥の深さを感じた公演だった。
 ヴェネツィアでは『ドン・ジョヴァンニ』を観た。これは2010年にプレミエ上演されて話題になった、ダミアーノ・ミケエレットの演出。邸宅のサロンですべてのシーンが進行し、壁が自在に動いて次々と場面が変わっていく。魅力的でパワフルなドン・ジョヴァンニに登場人物が繰られていくという設定なので、題名役が重要だ。この日のドン・ジョヴァンニ役は、2016年ウィーン国立歌劇場来日公演『フィガロの結婚』でもフィガロを歌ったアレッサンドロ・ルオンゴ。リッカルド・ムーティお気に入りの人気イタリア人バリトンだ。明るめの美声で、演技力があり、容姿も端麗。何より動きが色っぽく、若々しい魅力的なドン・ジョヴァンニを生き生きと演じていた。実はルオンゴを含め、この日の主要キャスト3人が、ローマ歌劇場と共に来日するのだ。ルオンゴは『マノン・レスコー』の兄レスコー役。またこの日ドンナ・アンナを歌った、フランチェスカ・ドットは、なんと『椿姫』のヴィオレッタを歌うのだ。ドットはすらりとした美人で背も高いので、衣裳がよく映える。声量は大きくはないが、演技力があり、人を惹きつける魅力がある。歌い方もドラマティックで、ちょっとパトリツィア・チョーフィに似たタイプか。なのでヴィオレッタは合っているかも知れない。もう一人はドン・オッターヴィオを歌ったアントニオ・ポーリ。すでに何度か来日し、日本でも人気のイタリア期待の若手テノールだ。10年ほど前から注目していたが、今回は見た目もかなり立派(な体格に)になり、同時に声も立派になって、表現力が各段にアップしたのに驚いた。もともと美声の端正な正統派テノールだが、高音に輝きが増し、舞台での存在感も出て来た。ポーリは『椿姫』のアルフレードを歌う。フェニーチェ歌劇場での指揮者は話題の古楽系指揮者、ステファノ・モンタナーリ。生き生きと良く歌い、音楽に勢いがあってドラマティックな演奏だ。今回は若手の実力派歌手たちの活躍を目のあたりにして収穫の多い旅となった。