東京バレエ団〈20世紀の傑作バレエ〉プティ/ ベジャール /キリアン 『アルルの女』『春の祭典』『小さな死』

東京バレエ団初演の2作と
国内初披露ダンサーによる「春の祭典」

Photo:Laura Ferrari

上野水香&ロベルト・ボッレ

 ローラン・プティ(1924〜2011)、モーリス・ベジャール(1927〜2007)、イリ・キリアン(1947〜)といえば、それぞれが20世紀の舞踊史に名を刻む振付家だ。その選りすぐりの作品を集めた公演が、東京バレエ団によって上演される。
 3作品のうち2作を占めるバレエ団初演作品のなかから、まずはプティの傑作『アルルの女』に注目しよう。フランスの小説家アルフォンス・ドーデ(1840〜1897)の戯曲と、そのために作曲されたジョルジュ・ビゼー(1838〜1875)の組曲をもとに振付けられた作品は、1974年にマルセイユ・バレエ団で初演されて以来、世界的なダンサーたちによって踊り継がれてきた。南フランスの農村に暮らす若い男女、フレデリとヴィヴェットは婚約者同士。ヴィヴェットは彼に優しい愛情を注ぐが、フレデリはアルルの闘牛場で出会った女性を忘れることができない。村人たちの祝福を受け、2人は結婚の夜を迎えるが、フレデリは狂気に陥り、祝いの踊りファランドールの曲が鳴り響く中、窓から身を投げる。
 8つの場面のうち最後の2曲は、ガラ公演でたびたび抜粋上演されており、よくご存知の方も多いだろう。メヌエットで踊られるのは、フレデリとヴィヴェットの静かなパ・ド・ドゥ。愛しい人と結ばれたいと願うヴィヴェットの、恥じらいを含んだしとやかな仕草や、表情豊かなポアントが心を打つ。ファランドールはフレデリのソロ。急速で勇壮な音楽の響きに乗り、まるで死に向かって突き進んでゆくかのような踊りは、クライマックスの大ジャンプまで、息もつかせぬ迫力に満ちている。劇的な対照をなす2つの場面からは数々の名ダンサーによる名演技が生まれているが、全編を通して観ると、感動はひとしおだ。モノトーンに統一された衣裳や素朴な動きが印象的な農民男女の踊りや、フィンセント・ファン・ゴッホ(1853〜1890)の絵画に触発されたというルネ・アリオの美術など、見どころは豊富。主役には、いままさに上り調子の川島麻実子と柄本弾に加え、すでに海外で抜粋を踊っている上野水香とロベルト・ボッレが登場。華のある大型カップルがプティの世界をどう表現するか、期待は高まる。

 
Photo:Primo Tolu

『小さな死』はキリアンが、頭部や四肢のない古代の彫像(トルソ)に思いを馳せて創ったという作品。モーツァルト没後200年にあたる1991年のザルツブルク音楽祭で、NDT(ネザーランド・ダンス・シアター)によって初演された。物語はないものの、有名なピアノ協奏曲第23番と第21番に乗って踊られる作品には、悠久の時の流れや、生と死という永遠普遍のテーマが横たわる。小さな死、Petite mort とはフランス語でオルガスムの意味だが、言葉から意味を探るよりも、動きと構成の美しさに見入ることこそ、この作品を真に味わう方法だろう。各6人の男女が身につけるヌーディな衣裳、固いオブジェのようなスカートの模型、細身の剣を振る男性たち、舞台いっぱいにふくらむ布の柔らかな質感。ペアになった男女の身体が作り出すかたちが、それ自体が自然の造形物であるかのように、神秘的な美しさを放つ。抜粋のパ・ド・ドゥは世界バレエフェスティバルなどで第一線のダンサーたちが踊っている。バレエ団のために振付けられた『パーフェクト・コンセプション』をはじめ、東京バレエ団はキリアン作品で高い評価を受けており、初挑戦となるこの作品でも、鍛えられたダンサーたちが実力を発揮しそうだ。

 
Photo:Daisy Komen

(写真はNDT公演より)

 そして、いまや東京バレエ団の代名詞のひとつともいえる『春の祭典』。イーゴリ・ストラヴィンスキー(1882〜1971)の音楽、ベジャールの振付から生まれる、圧倒的なエネルギーは、ブリュッセルでの世界初演から60年近くの時を経た現在も、観る者の心を根底から揺り動かす。東京バレエ団での初演は1993年。今回は、渡辺理恵、奈良春夏と岸本秀雄、伝田陽美と入戸野伊織が生贄を踊るが、奈良以外はこれが国内での『春の祭典』主役デビューになる。新鮮な踊りが楽しみだ。

 

東京バレエ団〈20世紀の傑作バレエ〉
「アルルの女」 「春の祭典」 「小さな死」

【公演日】

2017年
9月8日(金)7:00p.m.
9月9日(土)2:00p.m.
9月10日(日)2:00p.m.

会場:東京文化会館

【予定される主な配役】

  • 「アルルの女」
  • :上野水香、ロベルト・ボッレ[9/8、9/10]
    :川島麻実子、柄本弾[9/9]
  • 「春の祭典」
  • :奈良春夏、岸本秀雄[9/8]
    :伝田陽美、入戸野伊織[9/9]
    :渡辺理恵、岸本秀雄[9/10]

*「小さな死」の配役は振付指導者によるリハーサル開始後に決定されます。決まり次第、ホームページ等で発表いたします。

【入場料[税込]】

[9/8、9/10公演]
S=¥12,000 A=¥10,000 B=¥8,000 C=¥6,000 D=¥5,000 E=¥4,000
エコノミー券=¥3,000 学生券=¥2,000

[9/9公演]
S=¥10,000 A=¥8,000 B=¥6,000 C=¥5,000 D=¥4,000 E=¥3,000
エコノミー券=¥2,000 学生券=¥1,000

★ペア割(S、A、B席)あり  ★親子ペア割(S、A、B席)あり
*エコノミー券はイープラスのみで、学生券はNBS WEBチケットのみで8月4日(金)より発売。