イングリッシュ・ナショナル・バレエ 芸術監督タマラ・ロホ インタビュー 日本の皆さまに、ENBと恋に落ちてほしい

Photo:Laurent Liotardo

『コッペリア』

 英国ロンドン第二のバレエ団、イングリッシュ・ナショナル・バレエ(ENB)を、たった4年の間に個性的でエキサイティングな世界一流のバレエ団へと鮮やかに変身させてみせたタマラ・ロホ。芸術監督として、どのようなビジョンを持って改革に取り組んだのか。

「私が目標とするのは、優れた芸術の創造、一流アーティストの育成、 独自のレパートリーの発展 、現代の観客の心に訴える 古典作品の上演、そして観客層の拡大です。これらを可能とする理想のバレエ団を考えたときに、ENBには、芸術監督となる以前から大きな可能性を感じていました。
 監督就任後にまず取り組んだのは、核となるアーティスティック・チームの再編です。経験あるバレエ・マスターたちを新たに迎え、バレエ団のレベルを技術的・芸術的に向上させることを目指しました。
 そして、 レパートリーも大幅に改革し、 他のカンパニーが上演していない『海賊』といった古典作品や、 ピナ・バウシュの『春の祭典』などの現代の振付家による重要作品をレパートリーに加え、アクラム・カーンをはじめ、バレエ団とコラボレーションすることの少ない振付家による新作も手がけてきました。
 こうした作品の上演はもちろんリスクもありますが、私は、公的助成を受けている芸術・文化団体にとって、リスクをとることはむしろ義務であると考えています。そうでなければ、いったい誰が芸術を発展させていくというのでしょう? もし、誰もが過去を繰り返すだけであるなら、芸術は発展していくことはないのです」

   
Photo:Laurent Liotardo

『海賊』

 

 今回の来日公演で上演するのは新制作の『海賊』と『コッペリア』の2作品。イントロダクションとして、ENBというバレエ団を知ってもらうのに、これ以上に最適な作品はないという。

 

「特に『海賊』は 、6人ものプリンシパル・ロールが登場するうえ、オダリスクのようなソロも含めれば、一晩で10人もの見ごたえのある ダンサーを観ることができる、ショーケース的な作品です。制作過程においては私も大きく関わらせてもらい、場面の順序を変えて物語にクリアな流れを作り、作品にリズムを生み出すこと、そしてキャラクター同士の関係性を明確にすることを目指しました。
 もちろん、ボブ・リングウッドが手がけたセットや衣裳も秀逸です。私たちは幸運にも多文化都市ロンドンに拠点を置いているので、 インド、パキスタン、中東の伝統的な花嫁衣装を容易に入手することができました。それを裁断して作ったチュチュには、すべてが本物であるからこその美しさがあります。
 昨年は、この作品を持って パリ・オペラ座ガルニエ宮で公演を行いましたが、連日満員御礼となるほどの大盛況となり、 私自身にとってもたいへん誇りに思える公演となりました。というのも、『海賊』は、ルドルフ・ヌレエフがパリ・オペラ座バレエ団の芸術監督時代に制作したいと願いながら、その早すぎる死によって実現することのなかった作品だったからです。私にとってヌレエフは、芸術監督としての指標でもあり、パリ・オペラ座バレエ団において彼がおこなった改革、そして彼が育成した次世代のダンサーたちに受け継がれた遺産、 その優れた作品の数々、すべてにインスパイアされてきました。そんなヌレエフがやり残した最後の仕事である『海賊』をパリ・オペラ座で上演することで、彼の成し遂げたかった夢を完成させることができたように思っています。
 一方『コッペリア』は、きらめく宝石のような 作品です。ロナルド・ハインド版には、物語に明確な流れがありますし、 ドールハウスのように美しいセットも魅力です。コミカルで軽いタッチの作品は、お子さま連れのご家族にもぴったりだと思いますし、バレエを観たことがない方にも、きっと楽しんでいただけるはずです」

 ダンサーとしてこれまでに何度も日本を訪れ、日本の観客を心から敬愛しているというロホ。今回、 芸術監督として初の日本公演への意気込みも十分だ。

 

「世界中の優れたバレエを観て目の肥えた日本の観客の皆さまに、私たちのカンパニーをお披露目し、公演を楽しんでいただき、願わくはENBと恋に落ちていただけたらと思っています。そしてこの公演を機に日本の皆さまと長期的な関係を築き、 古典作品だけでなく、アクラム・カーンの『ジゼル』など、多様な作品を日本でもどんどん上演していけることを願っています」

2017年日本公演
イングリッシュ・ナショナル・バレエ

『コッペリア』

【公演日】

2017年
7月8日(土)1:00p.m.
7月8日(土)6:00p.m.
7月9日(日)2:00p.m.

会場:東京文化会館

【予定される主な配役】

  • スワニルダ
  • :アリーナ・コジョカル(7/8昼)
    :タマラ・ロホ(7/8夜)
    :高橋絵里奈(7/9)
  • フランツ
  • :セザール・コラレス(7/8昼)
    :イサック・エルナンデス(7/8夜)
    :ヨナ・アコスタ(7/9)

『海賊』

【公演日】

2017年
7月14日(金)6:30p.m.
7月15日(土)2:00p.m.
7月16日(日)2:00p.m.
7月17日(月・祝)2:00p.m.

会場:東京文化会館

【予定される主な配役】

  • メドーラ:
  • :タマラ・ロホ(7/14,16)
    :ローレッタ・サマースケールズ(7/15)
    :アリーナ・コジョカル(7/17)
  • コンラッド:
  • :イサック・エルナンデス(7/14,16)
    :ブルックリン・マック(7/15)
    :オシエル・グネオ(7/17)
  • アリ:
  • :セザール・コラレス(7/14,16,17)
    :オシエル・グネオ(7/15)
  • ギュルナーラ:
  • :ローレッタ・サマースケールズ(7/14,17)
    :金原里奈(7/15)
    :カーチャ・カニューコワ(7/16)

演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

【入場料[税込]】

S=¥20,000 A=¥18,000 B=¥16,000 C=¥13,000 D=¥10,000 E=¥7,000
エコノミー券=¥5,000 学生券=¥3,000

*エコノミー券はイープラスのみで、学生券はNBS WEBチケットのみで6月2日(金)より受付。
★ペア割引(S,A,B席)あり ★親子ペア券(S,A,B席)あり
*表記のキャストは2016年12月19日現在の予定です。カンパニーの都合、出演者の怪我や病気などにより変更になる場合があります。

【その他の公演】

7月20日(木) 「コッペリア」 名古屋・愛知県芸術劇場大ホール[TEL.052-241-8118]