東京バレエ団 ラ・バヤデール テクニックを極限まで駆使して踊り尽くしたい シュツットガルトでの経験が注ぎ込まれる熱きソロル! ダニエル・カマルゴ インタビュー

Photo:Altin Kaftira

── カマルゴさんは、2015年の日本公演で颯爽と『ロミオとジュリエット』に主演して以来、シュツットガルト・バレエ団の新星として注目されていました。ところが昨年秋、オランダ国立バレエ団に移籍。その動機は何だったのでしょうか。

カマルゴ:新たな環境で自分を成長させるために、移籍を決心しました。バレエダンサーである以上、バレエのテクニックを極限まで駆使して踊り尽くしたいという気持ちがあったんです。そのためには、全幕の古典バレエを踊ることは避けて通れない。オランダ国立バレエ団は、私にとって最高の環境です。

── シュツットガルトでの持ち役は、クランコ作品から最新鋭のコンテンポラリーまで、多彩な作品でした。その経験は、オランダで生きていますか。

カマルゴ:もちろん! 表現者としての基盤を築くことができました。プロとして、いかに舞台に向き合うのか、いかにパートナーと呼吸を合わせて作品を作り上げるのか、様々な経験をすることができました。なかでもクランコ作品のあの複雑なデュエットに鍛えられていたので、今、古典作品のパ・ド・ドゥで戸惑うことはありません。シュツットガルトの観客に鍛えられた、とも感じています。クランコ作品と歴代のダンサーを知り尽くし、新作もどん欲に楽しむ鑑識眼を持った人々の前で踊るのは、毎回、とてもチャレンジングでした。

Photo:Altin Kaftira

── オランダでの近況を教えてください。

カマルゴ:毎公演が、新たな挑戦です。シーズン開幕のガラで『ドン・キホーテ』のパ・ド・ドゥを踊り、9月にハンス・ファン・マーネンの現代作品を踊り、10〜11月にマカロワ版『ラ・バヤデール』、クリスマスから年明けにかけては、芸術監督テッド・ブランセンが振付けた『コッペリア』に主演しました。

── 『ラ・バヤデール』では、ナタリア・マカロワさん自身の指導を受けたそうですね。

カマルゴ:ソロルの演技について、いろいろとアドバイスを受けました。古典作品では、クランコ作品とはまた違うリアリティが求められるのです。たとえば、身振り手振りのなかからニキヤへの愛情を浮かび上がらせ、幻影の世界で彼女に再会できた時には喜びを爆発させる。彼が心の底から愛していたのは、ニキヤだけなんです。ただしソロルが孤軍奮闘しても、ドラマは深まりません。この作品の真骨頂は、登場人物が複雑なアンサンブルを織りなしていること。一つひとつの演技に特別な意味があり、ラストシーンで全てのディテールが一つに繋がる。どの演技も、どの場面もおろそかにできません。

Photo:Kiyonori Hasegawa

── 東京バレエ団とは、今回が初共演です。

カマルゴ:昨年夏の〈バレエの王子さま〉公演で、東京バレエ団が踊る『エチュード』を見ました。コール・ド・バレエの一体感が凄い。リハーサルにもとても真面目に取り組み、集中が途切れない。大いに刺激されました。ニキヤ役の上野水香さんの踊りは、ガラ公演で何度か一緒になった時に見ています。美しい容姿としっかりしたテクニックの持ち主で、ニキヤにぴったりのバレリーナですね。

── サッカー大国で鳴らすブラジルで、カマルゴさんは、なぜバレエを始めたのですか。

カマルゴ:確かにブラジルで男の子がバレエを習うのは、珍しいですね。私自身、バレエに興味はなかったけれど、9歳の時、姉と一緒にバレエのレッスンを受けさせられ……実際にやってみたら夢中になり、13歳の頃には、プロを目指していました。

── ユース・アメリカ・グランプリで銀賞を受賞、審査員だったジョン・クランコ・バレエ学校のタデウス・マタッチ校長に見出され、奨学生として同校に入学しました。

カマルゴ:最初は苦労しました。ドイツはブラジルよりずっと寒くて、言葉も習慣も食べ物も違うのに、困った時に相談できる家族は身近にいない。でも、だんだんと友達ができて、ここが自分の居場所だと思えるようになりました。宮川新大くん(東京バレエ団ソリスト)は、同級生だったんですよ。もっと学びたい、もっと上達したいという気持ちで、来る日も来る日もレッスンに励みました。もちろんバレエは表現芸術ですが、スポーツ顔負けの身体性もバレエの魅力です。

── 日本の観客にメッセージをお願いします。

カマルゴ: 日本で踊ることを心待ちにしています。ぜひ劇場にいらしてください。See you soon!

東京バレエ団
「ラ・バヤデール」

【公演日】

2017年
6月30日(金)6:30p.m.
7月1日(土)2:00p.m.
7月2日(日)2:00p.m.

会場:東京文化会館

【予定される主な配役】

  • ニキヤ:上野水香(6/30、7/2)、川島麻実子(7/1)
  • ソロル:ダニエル・カマルゴ(6/30、7/2)、柄本弾(7/1)
  • ガムザッティ:奈良春夏(6/30)、伝田陽美(7/1)、川島麻実子(7/2)

【入場料[税込]】

S=¥12,000 A=¥10,000 B=¥8,000 C=¥6,000 D=¥5,000 E=¥4,000
エコノミー券=¥3,000 学生券=¥2,000

*エコノミー券はe+のみで、学生券はNBS WEBチケットのみで、6月9日(金)より発売。
★ペア割[S,A,B席]あり★親子ペア割[S,A,B席]あり