2017年日本公演 パリ・オペラ座バレエ団 “バレエの殿堂”に輝くエトワール 現地取材●インタビュー マチアス・エイマン リュドミラ・パリエロ

3年ぶりの日本公演となるパリ・オペラ座バレエ団。世界の頂点を極める“バレエの殿堂”で燦然と輝くエトワールたち。 バレエ・ジャーナリストの濱田琴子さんによる現地でのインタビューをご紹介します。

『ラ・シルフィード』では、
前回見せたジェイムズとは
違うものをおみせできるでしょう

Photo:James Bort/OnP

 パリ・オペラ座ガルニエで11月15日まで続いた〈ジョージ・バランシン・プロ〉中、『モーツァルティアーナ』と『ブラームス=シェーンベルク・カルテット』の第三楽章に配役され、マチアス・エイマンは素晴らしい舞台を披露した。ソフトな微笑みと共に、豊かな音楽性と優れた技術で観客を舞台に引き込む彼。“稽古場での苦労をまったく感じさせない自然なダンス”、と芸術監督オレリー・デュポンも絶賛するダンサーである。
マチアスは今回の来日公演を、ミリアム・ウルド=ブラームをパートナーに『ラ・シルフィード』から始める。このロマンティック・バレエの代表作品を踊るのに必要とされる美しいプティット・バッテリーや高いソーは、彼にとってはお手の物だ。
「若い時に踊った役を何年後かに再び取り組める、というのはいいですね。基本的な仕事は自分の中に残っていて、だけど進歩があり、そして自分への信頼度というのもまったく違いますから。前回みせたジェイムズとはちょっと違うものをおみせできるでしょう。 ベストを尽くし、観客にジェイムズの心を伝えたいですね」
 初役で踊った4年前はリハーサルの早い時期からスカート状のウエアにし、舞台衣裳のキルトに慣れるようにした。動き方、脚の立て方、つま先の角度などを、チュチュで踊る女性ダンサーたちのように意識をして仕事をしたそうだ。
『ラ・シルフィード』の後も、日本での彼の活躍は続く。バランシンの『テーマとヴァリエーション』とロビンズの『アザー・ダンス』を踊る〈グラン・ガラ〉で、ネオ・クラシックにも優れたダンサーであることを日本の観客に認識させることは間違いない。

『アザー・ダンス』は、
回を重ねるほどに、
相手との理解が深まってゆく作品です

 『アザー・ダンス』のパートナーは、ミリアムではなくリュドミラ・パリエロである。
「まだ若い時、何回かオレリーと踊ったことがあります。だからオレリーは、作品によって技術的、身体的、人間的に僕には誰がパートナーとして最もふさわしいかがわかるんですね。リュドミラと踊るのって、もう一人の僕と踊ってるような感じなんですよ。回を重ねるほどに、相手との理解が深まってゆく作品です。『アザーダンス』の僕のパートナーは今も、これからもずっとリュドミラです!」

シルフィードってどんな女性か、
というリサーチの仕事は
とても面白かった

Photo:James Bort/OnP

 「前回来日公演に参加したのはコール・ド・バレエ時代。だから、今回がエトワールとしての初来日となります。ソリストの踊りをみせることによって、日本のバレエファンに真に接することができる機会なので、今から3月が楽しみなんです」
 リュドミラ・パリエロは前回のツアーで予定されていた『ドンキ・ホーテ』のキトリ役を降板しているだけに、来日により胸を膨らませる。彼女は『ラ・シルフィード』を復元したピエール・ラコットの、お気に入りのダンサーの一人。芸術監督オレリー・デュポンも彼女のダンスの正確さ、脚の仕事の素晴らしさを讃えるほどで、この作品にうってつけのエトワールだ。
「オペラ座で『ラ・シルフィード』を踊ったのはもう4年位前かしら。 リハーサルでラコットさんは、常に上半身の前傾を強調していました。ロマンティック・バレエの特徴的スタイルなんですね。これを意識することも大きな仕事の1つで、さらに非現実な妖精なので、動きには軽さが必要で…‥。身体的にはかなり大変な作品。でも、ジェイムズの理想の女性像であるラ・シルフィードってどんな人物か、というリサーチの仕事はとても面白かった。無邪気で後先何も考えずに楽しんでいて…‥けっこうないたずらっ子、ですね」
 日本公演ではジョシュア・オファルトがパートナー。

『アザー・ダンス』は
気持ちの通じ合う二人の関係が鍵。
これを踊れるかと思うとすごく嬉しい! 

 彼女が日本で踊るもう1つの作品『アザー・ダンス』は、オペラ座そして国内ツアーでも組んだマチアス・エイマンとである。
「ロビンズのこの作品を踊ると舞台でとても楽しめる! って、私たちわかってるんです。この振付には特にストーリーがなく、気持ちの通じ合う二人の関係が鍵。 そこにピアノが加わってのトリオとなって…‥。これを再び踊れるのかと思うと、すごく嬉しいわ!」
 今年はオペラ・ガルニエでウィリアム・フォーサイスとクリスタル・パイトの創作に参加しているリュドミラ。年末は『白鳥の湖』に配役されているが、その前には故郷のアルゼンチンでナタリア・マカロワ版『ラ・バヤデール』を踊り…‥。
 あらゆるスタイルのバレエを完璧にこなす彼女。日本のバレエファンにはまだ馴染みが薄いかもしれないが、今やオペラ座バレエ団になくてはならない存在のエトワールなのだ。

2017年日本公演
パリ・オペラ座バレエ団

「ラ・シルフィード」

【公演日】

2017年
3月2日(木)6:30p.m.
3月3日(金)6:30p.m.
3月4日(土)1:30p.m.
3月4日(土)6:30p.m.
3月5日(日)3:00p.m.

会場:東京文化会館

【予定される主な配役】

  • シルフィード
  • :ミリアム・ウルド=ブラーム(3/2, 3/4夜)
    :アマンディーヌ・アルビッソン(3/3, 3/5)
    :リュドミラ・パリエロ(3/4昼)
  • ジェイムズ
  • :マチアス・エイマン(3/2, 3/4夜)
    :マチュー・ガニオ(3/3, 3/5)
    :ジョシュア・オファルト(3/4昼)

〈グラン・ガラ〉

【公演日】

2017年
3月9日(木)6:30p.m.
3月10日(金)6:30p.m.
3月11日(土)1:30p.m.
3月11日(土)6:30p.m.
3月12日(日)3:00p.m.

会場:東京文化会館

【予定される主な配役】

  • 「テーマとヴァリエーション」
  • ローラ・エッケ、マチュー・ガニオ(3/9, 3/11夜)
    ミリアム・ウルド=ブラーム、マチアス・エイマン(3/10, 3/12)
    ドロテ・ジルベール、ジョシュア・オファルト(3/11昼)
  • 「ダフニスとクロエ」
  • ダフニス:
    エルヴェ・モロー(3/9, 3/11昼、夜)
    ジェルマン・ルーヴェ(3/10, 3/12)
    クロエ:
    オレリー・デュポン(3/9, 3/11昼、夜)
    アマンディーヌ・アルビッソン(3/10, 3/12)
  • 「アザー・ダンス」
  • リュドミラ・パリエロ、マチアス・エイマン(3/9, 3/11昼、夜)
    ドロテ・ジルベール、ジョシュア・オファルト(3/10, 3/12)

【入場料[税込]】

S=¥27,000 A=¥24,000 B=¥21,000 C=¥17,000 D=¥13,000 E=¥9,000
エコノミー券=¥4,000 学生券=¥4,000

★ペア割引(S,A,B席) ★親子ペア券(S,A,B席)
*エコノミー券はイープラスのみで、学生券はNBS WEBチケットのみで、2017年2月3日(金)より発売。
*表記の出演者は2016年9月23日現在の予定です。オペラ座バレエ団の都合、出演者の怪我等の理由により変更になる場合があります。