7月28日に75 歳の誕生日を迎えたマエストロ・ムーティは実に若々しい。少し白髪が目立つ
ようになっては来たが、エネルギッシュな指揮ぶりは観客を魅了し続けている。75 歳を記念し
てスカラ座博物館ではムーティ写真展が開かれている。展覧会のオープニングにムーティが11
年ぶりにスカラ座の舞台に立ったことは周知のことだが、2017 年1 月にはシカゴ響を率いてス
カラ座で演奏することが決まった。これを機会にスカラ座に復帰してくれないものかとミラノの
ムーティ・ファンたちは大いに期待している。
さて、今年も若い音楽家たち育成のためのリッカルド・ムーティ・イタリアン・オペラ・アカデミーが7 月23 日から8 月5 日までラヴェンナで開催された。第二回目の今年の演目は『椿姫』。世界各地から多くの参加者がマエストロの指導の下に作品の解釈と演奏法を学ぶという濃厚なプログラムである。
「優れた演奏家になるためには勉強するしかない」と繰り返すムーティは「学生の頃はスコアリーディングの訓練でミラノ・ヴェルディ音楽院の図書館にあるほとんどのスコアをピアノで弾く練習をしたし、対位法の練習帳が山積みになるほど毎日勉強した。作曲、ピアノばかりでなく、歴史や文学など広い分野の勉強が必要」と言う。
「次から次へと素晴らしい師に巡り会い、偉大な演奏家と共演することによって身に付けてきたことを若い音楽家たちに伝えておきたい」という強い思いがアカデミーを発足させたとのこと。8 月5 日には終了演奏会が行われた。
アカデミーが終わって数日後にムーティはザルツブルクに向かった。今年はウィーン・フィル
とのコンサートだけとはいえ、リヒャルト・シュトラウスの「町人貴族組曲」とブルックナーの
交響曲第二番という重厚なプログラム。シュトラウスの組曲には初挑戦とのことだが、ウィーン・
フィルとの息の合った演奏は満場の観客を興奮させた。三回の公演はすべてチケット完売でゲネ
プロも満席。ザルツブルクでの人気は大変なものだ。この音楽祭には45 年間毎年続いて参加し
ている。「カラヤンは毎年8 月の半ばにコンサートをしていた。私も彼の意思を継いでいきたい」
と語るムーティの満足げな笑顔が印象的だった。
田口道子(在ミラノ 演出家)
本紙7 月号でもご紹介した通り、東京バレエ団が毎夏開催している〈めぐろバレエ祭り〉では4 年目を迎える今年、本拠を置く目黒区の皆さまとの交流の場を広げるためのサテライト企画を催しました。東京医療センター内でのパフォーマンス披露もその一つ。東京バレエ団のダンサー氷室友のアレンジした「くるみ割り人形」の抜粋を上演しました。入院患者さん、付き添いの方も、ひとときの楽しさを味わっていただけたようです。東京バレエ団は、地域の皆さまとの交流、また社会貢献活動に、さまざまなかたちで取り組んでいます。
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