ウィーン・シリーズ ウィーン国立歌劇場 2016年日本公演 “ウィーンのツェルビネッタ” 時代を担うのはダニエラ・ファリーだ!

photo:Wiener Staatsoper / Michael Poehn

 日本のオペラ・ファンにとって、オペラ『ナクソス島のアリアドネ』で最も印象的な役は? と尋ねたら、ツェルビネッタと答える方が多いのではないでしょうか。それには、1980年の初来日と2000年のウィーン国立歌劇場日本公演での、エディタ・グルベローヴァ演じるツェルビネッタの強烈な印象が影響しているかもしれません。超絶技巧のコロラトゥーラが披露されるツェルビネッタ役は、若きグルベローヴァが世界的な名声を確立した役であり、そしてコロラトゥーラの女王と呼ばれるようになってからも、最大の当たり役となったものだったのです。
 もっとも、『ナクソス島のアリアドネ』という作品のストーリーや、登場人物のキャラクター、その関係性については、2011年のバイエルン国立歌劇場日本公演のロバート・カーセン演出で、“目からウロコが落ちるよう”という声もしきりでした。ダンサーたちとともに飛び跳ね、踊りながら超絶技巧コロラトゥーラで歌うツェルビネッタは、それまでには見たことのない新鮮さで、観客を仰天させました。カーセン演出は、ツェルビネッタ役に新時代をもたらしたといえるでしょう。もはやツェルビネッタに求められるのは超絶技巧のコロラトゥーラだけではないのだと。このときツェルビネッタを演じたのはダニエラ・ファリーです。そして、同時にそれは、“ダニエラ・ファリーのツェルビネッタ”の時代の到来ともなりました。

 ウィーン国立歌劇場でも、グルベローヴァが威力を発揮した1976年制作のフィリッポ・サンジュスト演出を新演出する2012年、ツェルビネッタ役はダニエラ・ファリー以外は想定されなかったようです。このスヴェン=エリック・ベヒトルフの演出では、ツェルビネッタには、カーセン演出のような大きな動きは要求されていません。しかし、その存在感は絶大です。ベヒトルフ自身が俳優であることも関係しているのでしょう、ツェルビネッタの奔放さや、自由な愛に生きる躍動感だけではない、ツェルビネッタの信条である「愛」の姿が、さまざまなかたちで示されることが必要となっています。プロローグでは純真な作曲家をコケットリーと愛嬌で魅惑し、“オペラ”ではアリアドネを真剣に説得する一方、口説く男たちと恋のかけひきを大胆に楽しむといった具合に。もちろん、演出によって表現の方法は変わってきますが、近年の演出では、表現力という点での動と静の多面性が求められることは必至となっているようです。
 近年、バイエルン国立歌劇場やウィーン国立歌劇場のほか、ケルン、ハンブルク、パリなど、ツェルビネッタ役で大活躍のダニエラ・ファリーは、現代に求められるツェルビネッタ歌いの筆頭といってよいでしょう。
 オペラにおいて、突出した歌手の存在が、一つの作品の時代を分けるといわれることがあります。たとえば、ノルマにおけるマリカ・カラス前と後、といわれることがあるように…‥。『ナクソス島のアリアドネ』におけるツェルビネッタ役に、グルベローヴァによる一つの時代が築かれたことは事実。しかし、時代の移り変わりとともに、ツェルビネッタ役に求められるのは超絶技巧だけでなくなったのです。

ダニエラ・ファリーの超絶技巧

『ナクソス島のアリアドネ』ツェルビネッタは、もちろんレパートリーのなかでも当たり役の一つとなっています。ウィーンのほか、バイエルン国立歌劇場、ハンブルク、パリ、リエージュ、ケルンなどの大舞台で聴衆を魅了しています。ツェルビネッタのほかにも、超絶技巧のコロラトゥーラの威力を見せるレパートリーは数々あります。ダニエラ・ファリーの魅力を存分に知っていただけるよう、ツェルビネッタとともに、ウィーン国立歌劇場での『ホフマン物語』のオランピアの動画もご紹介。ウィーン国立歌劇場のPR動画では、もちろんファリーが歌うツェルビネッタがハイライトとして紹介されています。

ツェルビネッタ ウィーン国立歌劇場公演より
http://ebravo.jp/nbs/2016/wso/archives/454

オランピア ウィーン国立歌劇場公演より
https://youtu.be/MSMvFWKCzI4

『ナクソス島のアリアドネ』ウィーン国立歌劇場PR動画
https://www.youtube.com/watch?v=B7j0InULTsg&feature=youtu.be

2016年日本公演 ウィーン国立歌劇場
『ナクソス島のアリアドネ』

【公演日】

2016年
10月25日(火) 7:00p.m.
10月28日(金) 3:00p.m.
10月30日(日) 3:00p.m.

会場:東京文化会館

作曲:R.シュトラウス
演出:スヴェン=エリック・ベヒトルフ
指揮:マレク・ヤノフスキ

【入場料[税込]】

S=¥63,000 A=¥58,000 B=¥53,000 C=¥48,000 D=¥32,000 E=¥25,000 F=¥17,000
エコノミー券=¥13,000 学生券=¥8,000

2016年日本公演 ウィーン国立歌劇場
『ワルキューレ』

【公演日】

2016年
11月 6日(日) 3:00p.m.
11月 9日(水) 3:00p.m.
11月12日(土) 3:00p.m.

会場:東京文化会館

作曲:R.ワーグナー
演出:スヴェン=エリック・ベヒトルフ
指揮:アダム・フィッシャー

【入場料[税込]】

S=¥67,000 A=¥61,000 B=¥54,000 C=¥49,000 D=¥33,000 E=¥25,000 F=¥17,000
エコノミー券=¥13,000 学生券=¥8,000

2016年日本公演 ウィーン国立歌劇場
『フィガロの結婚』

【公演日】

2016年
11月10日(木) 5:00p.m.
11月13日(日) 3:00p.m.
11月15日(火) 3:00p.m.

会場:神奈川県民ホール

作曲:W.A.モーツァルト
演出:ジャン=ピエール・ポネル
指揮:リッカルド・ムーティ

【入場料[税込]】

S=¥65,000 A=¥60,000 B=¥54,000 C=¥49,000 D=¥33,000 E=¥25,000 F=¥17,000
エコノミー券=¥13,000 学生券=¥8,000