英国ロイヤル・バレエ団 2016年日本公演 現地取材 ローレン・カスバートソン インタビュー 「子どものころから親しんだ作品は直感に従って踊ることができ、舞台の上で完全に自由になれるんです」

2013年日本公演には残念ながら参加することができなかったため、今回は日本で踊れることへの意気込みも人一倍というローレン・カスバートソン。ロンドンでの公演の合間を縫って、インタビューに応じてくれました。自身の経験から得たこと、『ジゼル』や『ロミオとジュリエット』を踊ることへの思いなど、興味深い言葉が聞かれます。

 国際色豊かなロイヤル・バレエ団で唯一の英国人女性プリンシパル、ローレン・カスバートソンは、8歳でロイヤル・バレエ学校に入学し、コール・ド・バレエから全階級を経験してプリンシパルにまで上り詰めた、生え抜きのロイヤル・ダンサーだ。前回2013年の英国ロイヤル・バレエ団日本公演では、残念ながら足首の手術からの回復が遅れ泣く泣く来日を断念したため、今回の公演にかける本人の意気込みは人一倍。「私が心から愛する二作品を日本のお客様の前で踊れることが本当に嬉しくて、今からワクワクしています!」
 一度ならず三度も、怪我や病気で長期間踊れない時期を経験したカスバートソン。再起も危ぶまれた中、その度に不屈の精神でより力強いダンサーとなって感動的な復帰を果たした裏には、想像を絶する努力と忍耐の日々があったという。「人間というのは、思ったよりもずっと強いものです。基礎の基礎さえできないような日々は、私のキャリアの中でも最も辛い時期でしたが、私のダンサーとしての旅はまだまだ終わっていない、という強い想いが、私は舞台に戻るべき運命にあると信じさせてくれました」
 2009年に『ジゼル』で主役デビューした際は、 英国紙で「現代におけるロマンティック・スタイルを完璧に体現した」と絶賛されたカスバートソンだが、今シーズンこの作品を踊ってやっと、 彼女自身で納得のいくジゼル像を見出すことができたという。「この境地に至るまでには、たくさんの努力が必要でした。例えば、 腕の動きと頭の位置に関しては、どのくらいゆっくり動かせばいいのか等を何時間もひたすら研究することで、ロマンティック・スタイルの中で完全に自由に踊れるようになることを目指したんです。リハーサルでやったことをそのまま舞台で“再現”するのではなくて、あくまで舞台の上にいるその場、その瞬間に、ライブで美しいイメージを描けるようにするためには、徹底的にスタイルを体得する必要がありますから。
 2幕の、ピンが床に落ちる音も聞こえそうなほどの静けさは、ダンサーにとっては恐怖であり、毎回途方もない孤独を感じます。ジゼルも、ウィリたちの静謐な絶望に屈しそうになりますが、アルブレヒトへの強い愛のために、すんでのところで止まります。2幕は本当に難しいものですが、何ひとつ変える必要のないほどに、完成された振付ですね」

 一方、『ロミオとジュリエット』は、2003年弱冠19歳の時に主役に抜擢され、長年踊り込んできたカスバートソンの十八番だ。「ロイヤル・バレエ学校にいた子どもの頃、スタジオに駆け込んでバルコニーの場面の音楽をかけては、振付も全然知らないのに、音楽に合わせてやりたい放題跳び回っていたんです(笑)。なので初めて踊った時は、子どもの頃からの夢が叶って嬉しかったのと同時に、なるべくしてなったというか、しっくりくるものを感じました。ジュリエットを演じる時は、“これから乳母を探しに部屋に駆け込んで一緒に遊ぶんだ”と最初の場面を自分に言い聞かせる以外、何も考えません。その後のことは、順番に登場するキャラクターとのやり取りに反応していくだけで、勝手に展開していくからです。私の胸の高鳴りと思いに合わせて物語が進行していく……そんな自然な展開が可能なのも、全てマクミランの素晴らしい振付があればこそだと思います」
 また、長年この作品を一緒に踊ってきたフェデリコ・ボネッリとのパートナーシップが確固たるものになっていく中で、未だかつてないほど自由に踊れるようになったというカスバートソン。自信が増すに従い、自らの直感を信頼できるようにもなってきた。「8歳からロイヤル・バレエ学校で育ったことで、やはり骨の髄まで染み込んでいる何かがあるのだと思います。子どもの頃から慣れ親しんできた作品に関しては特に、直感で正しいと思えるやり方に従って踊ることができますし、舞台の上で完全に自由になれるんです」

2016年日本公演
英国ロイヤル・バレエ団

「ロミオとジュリエット」(全3幕)

【公演日】

2016年
6月16日(木)6:30p.m. ジュリエット:ローレン・カスバートソン/ロミオ:フェデリコ・ボネッリ
6月17日(金)6:30p.m. ジュリエット:ヤーナ・サレンコ/ロミオ:スティーヴン・マックレー
6月18日(土)1:00p.m. ジュリエット:サラ・ラム/ロミオ:ワディム・ムンタギロフ
6月18日(土)6:00p.m. ジュリエット:ナターリヤ・オシポワ/ロミオ:マシュー・ゴールディング
6月19日(日)1:00p.m. ジュリエット:マリアネラ・ヌニェス/ロミオ:ティアゴ・ソアレス

会場:東京文化会館

「ジゼル」(全2幕)

【公演日】

2016年
6月22日(水)7:00p.m. ジゼル:マリアネラ・ヌニェス/アルブレヒト:ワディム・ムンタギロフ
6月24日(金)7:00p.m. ジゼル:ナターリヤ・オシポワ/アルブレヒト:マシュー・ゴールディング
6月25日(土)2:00p.m. ジゼル:サラ・ラム/アルブレヒト:スティーヴン・マックレー
6月26日(日)2:00p.m. ジゼル:ローレン・カスバートソン/アルブレヒト:フェデリコ・ボネッリ

会場:東京文化会館

【入場料[税込]】

S=¥25,000 A=¥22,000 B=¥19,000 C=¥15,000 D=¥11,000 E=¥8,000
エコノミー券=¥6,000 学生券=¥4,000