この夏秋、東京・横浜を盛り上げる東京バレエ団のお祭り「ドン・キ」 ウラジーミル・ワシーリエフ特別出演決定!

photos:Kiyonori Hasegawa

アリーナ・コジョカル&ワディム・ムンタギロフ

 アリーナ・コジョカルは掛け値なしに“名花”と呼ぶにふさわしいバレリーナだ。ルーマニアに生まれ、若くして英国ロイヤル・バレエ団の顔となり、2013年秋以降はイングリッシュ・ナショナル・バレエのリード・プリンシパルを務めながら世界各地で活躍中。可憐な容姿、抜群の音楽性を持ち味とし、『ジゼル』『ロミオとジュリエット』『マノン』といったドラマティックな作品の表題役では全身全霊をこめて役柄を体現し凄みすら感じさせる。  昨年7月、自身がプロデュースした〈ドリーム・プロジェクト2014〉では、さらなる高みへと登りつつあることを示した。巨匠ジョン・ノイマイヤー近年屈指の評判作で彼女の代表作ともなった『リリオム』の抜粋や衝撃的な問題作『レディオとジュリエット』を披露し表現の幅を広げる。いつ、いかなるときでも精緻にステップを踏み、音楽と分かち難く結びつきながら身体の底からあふれんばかりの感情を熱くにじませる。プロ中のプロとして一切の妥協を許さぬ真摯な姿勢と初心を忘れない踊り心にあふれた演技は清々しい。
 ワディム・ムンタギロフは“時の人”だ。ロシアのチェリャビンスクに生まれ、英国ロイヤル・バレエ学校に学び、イングリッシュ・ナショナル・バレエに入団した。チョコ出身の名プリマ、ダリア・クリメントヴァとのコンビで英国バレエ界注目の的となる。日本でも2012年2月、コジョカルのプロデュースによる〈ドリーム・プロジェクト〉で鮮烈なデビューを果たした。当時弱冠21歳。甘いマスク、背が高く優美な身体のライン、完成度のテクニックを兼ね備える。ことにクリメントヴァと踊った『くるみ割り人形』よりグラン・パ・ド・ドゥにおける、きめ細やかな踊りと甘美なたたずまいによって、えもいわれぬ陶酔へと誘った。昨年英国ロイヤル・バレエ団へ移籍し一層活躍の場を広げている。
 絶頂期にあるコジョカルと今最高に旬なホープのムンタギロフ。日本での待ちに待った全幕での共演が、世界バレエフェスティバル全幕特別プロとして実現する! 世代は異なるが同じ英国ロイヤル・バレエ学校出身であり、優雅なダンス・スタイルには相通じるものがあろう。お芝居の掛け合いが多く、大技も満載の『ドン・キホーテ』では、息を合わせて最高に盛り上がるステージを創りあげるはずだ。好調をキープしている東京バレエ団と共に紡ぐ暑気も吹き飛ぶようなワクワクする舞台に酔いしれたい。


photo:Kiyonori Hasegawa

沖香菜子と梅澤紘貴

 バレエ団にとって伝統やレパートリーはもとよりダンサーは大切な財産だ。東京バレエ団が本年3月成功裏に終えた創立50周年記念シリーズを振り返って痛感した。輝かしい偉業が次世代に着実に受け継がれている。沖香菜子と梅澤紘貴もシリーズを通して飛躍した。  沖はボリショイ・バレエ学校を経て2010年に入団。柔軟な身体を存分に生かした伸びやかな踊りが目を引く。転機は昨年2月の『ロミオとジュリエット』のジュリエット役だろう。純情な少女が恋を知り、愛するロミオへの想いを胸に奔放に生きる姿は、ときにいじらしく、ときに痛ましい。ジュリエットの変わりゆく感情が、息づかいが、観るものの胸に迫る。さながら役に乗り移ったかのような熱演で一皮むけた感があった。
 梅澤は2005年に入団。まだ若いが舞台経験豊富である。華奢な体つきとノーブルな雰囲気が印象的だったが、地道に踊りと演技に磨きをかけ『春の祭典』(ベジャール振付)の生贄を踊るなど大役をつかんできた。『ロミオとジュリエット』では、ジュリエットの婚約者パリスを演じ、高貴な青年貴族の趣をこれ以上ないというくらいに醸し出した。王子役から個性の強いキャラクター役まで変幻自在に踊りこなし舞台を勢いづける中核的存在だ。
 全幕初共演は昨秋の山口・岩国での『ドン・キホーテ』。その少し前に東京で行われた公開リハーサル&記者懇親会の場で、演出・振付のウラジーミル・ワシーリエフがふたりを絶賛したこともあり大いに期待して駆けつけた。何よりも魅力的なのは息がぴったりなこと。街の広場での何気ないやりとりが生きいきとしていて微笑ましい。バジルが狂言自殺を図る場での梅澤の茶目っ気たっぷりで滑稽な演技、それに対するキトリの沖の反応も気が利いている。グラン・パ・ド・ドゥではマナー良く踊りつつ華やかさも感じさせた。
 昨秋以後もコンビの快進撃は止まらない。『くるみ割り人形』に主演し、情感豊かなアダージオによって、指導に当たったウラジーミル・マラーホフからも賞賛を勝ち得た。マラーホフ版『眠れる森の美女』でもフロリナ姫と青い鳥を踊りキャラクター造形に冴えを見せる。今春、梅澤はプリンシパルに、沖はソリストに昇進した。上り調子の彼らの主演する『ドン・キホーテ』が早くも関東(神奈川)で上演されるのは喜ばしい。新芸術監督・斎藤友佳理のもとで自信と誇りを持ち、活気のある踊りを披露するだろう。開幕が待ち遠しい。


世界バレエフェスティバル全幕特別プロ
「ドン・キホーテ」


【公演日】

2015年
7月29日(水)7:00p.m.

会場:東京文化会館

【予定される主な配役】

キトリ:アリーナ・コジョカル/バジル:ワディム・ムンタギロフ/ ほか、東京バレエ団

指揮:ワレリー・オブジャニコフ
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団

【入場料[税込]】

S=¥16,000 A=¥14,000 B=¥12,000 C=¥9,000 D=¥6,000 E=¥4,000
学生券=¥2,000

*学生券はNBS WEBチケットのみで、7月10日(金)より発売。

東京バレエ団 横浜公演
「ドン・キホーテ」


【公演日】

2015年
10月31日(土)2:00p.m.

会場:神奈川県民ホール

【予定される主な配役】

キトリ:沖香菜子/バジル:梅澤紘貴/ ほか、東京バレエ団

指揮:井田勝大
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

【入場料[税込]】

S=¥10,000 A=¥8,000 B=¥6,000 C=¥5,000 D=¥4,000 E=¥3,000
エコノミー券=¥2,000 学生券=¥1,500

*エコノミー券はe+のみで、学生券はNBS WEBチケットのみで、10月2日(金)より発売。