ジェイソン・レイリー インタビュージェイソン・レイリー(プリンシパル) インタビュー
―――7月にシュッツットガルトであなたの素晴らしいカラボスを観て背筋が震えました。 ありがとう、照れるね。あの役は......、観てて分かるだろうけど、あまりにも演じていて楽しい役柄だから、下手をすると舞台上で自分自身を見失ってしまう。そうならないように、何よりうまく自分をコントロールすることが大切。そもそも振付家のマリシア(ハイデ)は過剰演技することを嫌う。とてもナチュラルな演技を求める。だから僕は自分のパーソナルな感情の中から、カラボスとコネクトすることのできる何かを探し出して、それを演技に注入するようにしてる。とはいえ、僕は女じゃないし女装趣味もないからカラボスの感情を理解するのは大変なんだけどね。しかもあの衣装がすっごく重い。1時間半かけて化粧をして、つけ爪をつけて、長い髪がターンするたびに顔にべたーって張り付いて。楽しいことは楽しいんだけど、何もかもが大変な役でもある(笑)。 ―――あなたは王子も青い鳥もレパートリーとして踊られるんですよね。意外です。 うん、自分でもつい最近まで王子になれるなんて思ってもいなかった(笑)。だって、ほら、こんなピアスをしてバギーパンツを履いてる王子なんてどこの国にいる? だけど02/03シーズンに代役ではじめて『白鳥の湖』の王子を演じてみたら、これが本当にクールで面白かった。ワオ、僕も白いタイツを履いてノーブルになれるんだって驚いた。それからは、ほとんどの王子役を演じている。芸術監督のリードはそうして、僕自身でさえ考えつかないような挑戦を与えてくれるから。シュツットガルトにはもう12年いるけど、絶対に飽きることがない。 ―――東京で演じられるもう一方の役=オネーギンも、また全く異なる役柄ですね。演じようによっては、とても自己中心的な男性にも見えてしまいます。 そうなんだよ。とても傲慢で、とても...ろくでなしな野郎(笑)。だけど人間誰しも人に対してそういう態度をとってしまうことはある。だから僕は、繰り返しになるけど、この役に関しても自分のパーソナルな感情とつなげて演じるようにしてる。たとえば3幕では、僕が一時期狂ったようにある女性に恋をして、だけど上手くいかなかったときの経験、その心が粉々に破壊されたときの経験を思い出して、オネーギンに入れ込むようにしてる。でも本当にこれは数あるクランコ・バレエのなかでも最も難しい役柄のひとつ。あまりにも多層的で、ひとつ演技を間違えると観客にオネーギンの心の繊細な機微が届かなくなる。だからこの役にはいつも100%の集中を持って臨むようにしてる。だからオネーギンを演じたあとは、彼の魂が自分のなかから抜けきるのに丸一日かかることもあるぐらいだよ。 ![]() 「オネーギン」 オネーギン:ジェイソン・レイリー
ジェイソン・レイリーの出演予定日 |